さて、「再分配」と「セーフティーネット」は、企業に要請するのではなく、政府が行うべき仕事だ。すべてが岸田首相の責任ではなく、これまでの経緯にも問題があるのだが、企業に期待や要請することが適切な問題ではない。
その①「能力主義とベーシックインカム」
日本の上半分をもっと競争的に活性化して経済成長を促し、拡大するはずの貧富の格差を、現在よりももっと大胆に、公的な制度で「再配分」する言わば社会的な保険を作ることが日本経済立て直しの「解」だと筆者は考えてきた。
ざっくり言って「正社員の解雇を含む広範な規制緩和にベーシックインカムと公的職業訓練」のようなシステムだ。
いささかギスギスした優勝劣敗を伴う競争社会になるが、経済は現在よりも格段に活性化するだろう。また、競争の敗者や能力主義的競争に不向きな人々のためには「社会的保険」として、大きな再分配を用意する。国全体として、豊かになるだろうし、今よりもかなりマシではないか。
なお、再分配政策と能力主義的資本主義の導入は、同時ないし前者が先に行われるべきだ。セーフティーネットなしに、いきなり競争だけを解禁するのは、手順が違う。
その②「非正規労働者の団結」
さて、前記のように考えてみたものの、「非正規労働者」や「正社員(下)」のグループに対する経済的圧迫はやみそうにない。「再分配」(たとえばベーシックインカム)があるので「食ってはいける」としても、精神的には不満が残るのではないか。もう少し幸福感が増す手立てはないか。
労働者がもっと交渉力を持つべきだ
ぼんやり、そのようなことを考えていたら、アマゾンやスターバックスといった経営者が組合嫌いな会社で相次いで労働組合が結成されたというニュースが目についた。
バランス上、労働者がもっと交渉力を持つべきだ。賃金抑圧のおおもとは非正規労働者の雇用が流動的・伸縮的で、「正社員(下)」のクラスが競争にさらされて、賃金の底が抜けていることにありそうだ。
例えば、非正規労働者が雇い主たる企業を超えて、少なくとも業種単位で組織された「組合」を想像してみよう。
仮にコンビニエンスストアがA、B、Cの3社だけ存在し、それらのアルバイトがすべて「コンビニ・バイト組合」に組織されたとしよう。ここでは、非正規労働者の「流動性」が交渉の武器になる。たとえば、C社の条件が不当に悪いと判断した場合、組合はC社から一定数のアルバイト店員(組合員)を引き上げることを交渉材料に、C社と団体交渉を行うことが可能だ。C社にとって競争上重要な地域や店舗を狙い撃ちしてもいいだろう。
1つの企業内に正社員として囲い込まれていて、多くは「御用組合」として飼い慣らされてしまう企業別の組合などとは比べものにならない強力な交渉力だ。
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