これまでとまったく違うヤバい円安が起きている デフレマインドに支配されているのは日銀だけ

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中央銀行としての信頼性を失わないための行動

それは、おそらく、中央銀行としての信頼性を失わないためだったと思われる。金融政策の方針として明示している10年物国債金利の変動幅の上限0.25%を死守しなければ、日本銀行の政策、日本銀行が今後打ち出す政策に対する信頼が失われてしまい、金融政策による金融市場のコントロールが利かなくなることを恐れたためだと思われる。

セントラルバンクとしては、それは最悪のシナリオだ。金融政策が効かない、中央銀行の政策コミットメントが信用されない、それは大事件どころではなく、中央銀行の終わり、日本経済の終わりである。

だから、それはなんとしても回避しなくてはいけない。物価目標どころの騒ぎではないのである。だから、インフレ率2%が達成されなくても、彼らはそれほど気にしていないが、イールドカーブコントロールという金融政策として明示したことを自ら放棄する姿勢は許されない。そんなことをしたら、もっとも危険なシナリオを招くと考えたと思われる。

実際に、それに近い例はある。豪州中央銀行のイールドカーブコントロールターゲットの放棄事件である。同国の中銀は、3年物の国債利回りのターゲットを0.1%に設定していたが、2021年10月末には0.2%を突破した。中銀はそれを放置し、一時は一気に0.5%を超える水準まで上昇したのである。そして、その後、豪州中銀は、イールドカーブコントロールを撤廃し、事後的に、市場の暴落を追認したのである。つまり、市場に従わざるをえなくなったのである。

日本銀行は、このシナリオを一番恐れているはずだ。日本国債市場で豪州と同じことが起きれば、その影響は次元が異なる。国債市場の規模も違うし、日本銀行が抱えている国債の金額はまさに桁違いであるからである。

したがって、私は、日銀のとった行動を批判する気はない。むしろ同情する。しかし、だからこそ、日本国債市場は危機であり、「ほぼ終わり」なのである。

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