「コーダ」や「シング」など"聴く映画"が人気の理由 「高音質大音量」需要がもたらす大きなマーケット

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以上、長々と書いた「圧縮音源の常態化」「スマホによる“ながら聴き”」「スピーカーのない生活」に加えて、追い打ちをかけたのが、言うまでもなくコロナ禍だ。

ライブやイベント、カラオケなど、高音質や大音量に生で触れる機会が一気に喪失されたこと。これらが相まって、映画館という「高音質大音量」空間で「聴く映画」に没入する背景が生まれてきたと考えるのである。

「リスニング空間」としての潜在マーケット

ここまでの論は、スマホも圧縮音源もなく、逆にスピーカーはどこにでもあった時代を知っているロートルの意見なのかもしれないが、それでも「高音質大音量」は、若い方にも共有し得る肉体的・直感的な快感だと思うので、そこには大きな需要があるはずだ。

そして、そんな需要の受け皿として、特に映画館には大きなチャンスがある。具体的には、「聴く映画」から転じて、映画以外、つまり映像なしの「リスニング空間」としての潜在マーケットだ。

例えば、シネコンの巨大スピーカーを使って、名盤レコードを「高音質大音量」で聴くイベント(かつて「レコード・コンサート」と呼ばれたもの)。この企画、内容もシンプルだし、またそれほどの元手も要らない。ちょっとしたレコードプレイヤーとLPがあればいい。

大滝詠一『A LONG VACATION』を、A・ B面通して、爆音で聴くイベントがあるとして、それが映画と同程度の料金であれば、私はぜひ参加したいと思う。

映画『コーダ あいのうた』を盛り上げるのは、ジョニ・ミッチェルの『Both Sides Now』(青春の光と影)という曲だ。「高音質大音量」に包まれて、映画館でうっとりとしながら私は、映像に加えて音という両面(Both Sides)の潜在マーケットについて考えていた。

スージー鈴木 評論家

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すーじー すずき / Suzie Suzuki

音楽評論家・野球評論家。歌謡曲からテレビドラマ、映画や野球など数多くのコンテンツをカバーする。著書に『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト・プレス)、『1979年の歌謡曲』『【F】を3本の弦で弾くギター超カンタン奏法』(ともに彩流社)。連載は『週刊ベースボール』「水道橋博士のメルマ旬報」「Re:minder」、東京スポーツなど。

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