「コーダ」や「シング」など"聴く映画"が人気の理由 「高音質大音量」需要がもたらす大きなマーケット

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言い換えれば、今やもっともメジャーな音楽プレイヤーであるスマホは、「音楽そのものにもっとも没入しにくいプレイヤー」なのだ。

対して映画館は、強制的にスマホから隔絶され、音楽と映像に完全没入できる。後に触れるコロナ禍の影響もあって、今や、唯一の「音楽没入空間」だと言えよう。

そして、「高音質大音量」需要に向けて、これが最大の要因だと思うのが「スピーカーで音楽を聴く機会の減少」である。

「スピーカーのない生活」となった現代

これも大げさに言えば、われわれはもう「スピーカーのない生活」をしている。いやあるにはある。テレビはもちろん、PCにもスマホにも付いている。しかしそれらは、かつて昭和の書斎に置かれていた大きなスピーカーとは違って、音楽だけに特化したものではない。

そんな状況を補完するために、私なども、Bluetoothスピーカーをスマホとつないで使ったりしているが、聴こえてくる音は、もともと圧縮音源であり、また、大音量で聴ける住宅環境もない。

かつて、昭和の時代にFM雑誌(というのがありました)で見た「リスニングルーム拝見」のようなコーナー。オーディオマニアの読者が、凝りに凝ったシステムコンポや自作のスピーカーを自慢する企画――私(たち)は、あのような部屋に、どうやら一生縁がなさそうな感じだ。

「スピーカーのない生活」を言い換えると、「スピーカーから空気を震わせて、ハイファイな高音・低音を耳に流し込む、あの快感から無縁な生活」である。

私事になるが先日、ゴダイゴのミッキー吉野氏と、ゴダイゴのLP『OUR DECADE』を爆音で聴くイベントを開催したのだが(3月22日、於:南青山Baroom)、異常に感動的だった。正直、ちょっと目頭が熱くなったりもした。

「あぁ、やっぱり音楽は、空気を震わせて聴くものだ」と痛感した。イヤホンでチマチマ聴くのが音楽じゃない、とまでは言わないが、それだけが音楽じゃないとは断言できる。

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