2014年初に1ドル105円をつけた為替相場は、2015年末には120円となった。値幅としては15円ほどであったが、1年の後半に急激に円安が進行した印象がある。輸出企業のボーナス的な利益だけでなく、「日本国内生産」への移行が進む循環が発生することに期待したい。
デジタルデバイスの世界でも、国内の技術への回帰が進んでいる。非常にシンプルな「モバイルバッテリー」という製品で日本製のバッテリーを採用し、新たな価値づくりに取り組んでいるブランドがcheero(チーロ)だ。
同社は、中国の生産拠点で高まってきた品質をいかし、低価格かつ迅速に製品を投入すること、そして販売チャネルをAmazon.co.jpに集中してマーケティングプランを立てることによって、急成長してきた。
同社が日本製のバッテリーを利用するメリットについて、そして同様の手法による海外展開について、展望を聞いた。
モバイルバッテリー市場の拡大と、低価格競争
モバイルバッテリー市場は、スマートフォンの普及とバッテリー持続時間への不安から、拡大の一途をたどっている。夜のうちにスマホをフル充電して、朝出かけ、夕方電池残量が減ってくると、カバンの中のバッテリーにUSBケーブルを差し込んで充電しながら利用する、というスタイルだ。
中高生にもユーザーが多く、たとえば枕元にコンセントがない場合や、旅行、合宿のときにも大容量のバッテリーを重宝するという。また東日本大震災や停電を招く気象災害の経験から、通信経路の確保としてスマートフォンの電池を絶やさないために用意する使い方もある。
筆者は米国で暮らしているが、米国では公共交通機関を活用した通勤よりも車での移動が中心となり、車中ではシガーソケットから充電することができるため、モバイルバッテリーへの需要は、限られた都市以外はほとんどない。
そのため、米国にいても低価格化を察知することはできないが、日本では価格の下落も進んでいる。主戦場はオンラインだ。
たとえばAmazon.co.jpでモバイルバッテリーを検索してみると、2000円台で10000mAhクラスのバッテリーを購入することができる。
10000mAhは、一般的なスマートフォンを4~5回充電できる容量だ。米国と比較すると価格は1/5程度で、これほど違うと、需要の差を感じられるのではないだろうか。
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