「僕たちは死ぬまでレガシィを磨き続ける」 吉永社長が語る富士重工業の生きる道(上)
――米国市場の好調ぶりをどう受け止めていますか。喜びなのか、それとも危機感でしょうか。
これだけスバルというブランドを買っていただけるのは喜び。ただ、やはり社内の課題として、急成長に伴うひずみもある。物流や部品の供給体制など、今は必死になってインフラ関係を追いつかせようとしている。私が一番強く言っているのは「とにかく安全と品質だけは何があっても最重要だ」ということ。
需給が逼迫すると、製造部門は「ラインを止めるわけにはいかない」という気持ちになりがちだが、品質にちょっとでも不安があれば止める。供給が足りないことは反省すべきで、もちろん整備していく。ただ、ここ(品質)が崩れると、根っこから崩れてしまう。
われわれの強みは前身の飛行機会社(中島飛行機)のDNAから来ている。この特徴を一言でいうと「安心と愉しさ」。だから社内の安全基準が異様に高い。よそから言われてやったのではなく、最初から高い。そうした中で、「ぶつからないクルマ」を作ってみたくなるわけです。
「110万台+α」に込めた意味
――吉永社長は常々「100万台以上は目指さない」と言ってきました。しかし今年5月に発表した中期経営ビジョンでは、2020年の目標として「110万台+α」と掲げました。
数を追わない、という考え方は変わっていない。ただ、(外から)100万台はもう超えてしまうでしょうと言われ始めて、次の目標が必要になった(14年度の世界販売見通しは約91万台)。とはいえ150万台とか、そういう数字を出すと、世の中から、そして社内から絶対に誤解される。「スバルは数を追い出した」と。社内で勘違いされないことが一番大事。だから妙に刻んだ110万台という数字を出した。それでも、「すぐに達成するでしょう」と言われ、「+α」というものをつけた。
なぜそう言われるのかというと、目標台数の大半、(2020年の北米の販売目標である)60万台を占めるのが今一番伸びている北米だから。最近は、「あと1年くらいで達成できるのでは」と何度も言われる。達成したらしたで、せっかくお客さんに買ってもらっているのに、それ以上の数字を出しませんというわけにはいかない。