スバル車に宿る、負けず嫌いの反骨精神 吉永社長が語る富士重工業の生きる道(下)
――2014年夏に米国で発売したSUV(スポーツ多目的車)の「アウトバック」とセダンの「レガシィ」が好調です。スバルはSUVに特徴がありますが、米国では「スバル=セダン」というイメージも強いのでしょうか。
それはまったくないと思う。ただ、セダンが売れ始めているのはとてもうれしい。今まで「セダンを売れ」と言ったことはほとんどない。営業現場のオーソドックスな人たちからすれば、「車の保守本流であるセダンに力を入れろ」というのは日本でもよく出る話。
私は営業出身だが、セダンを売るのが一番難しい。それを買う人の多くは、車に強い興味を持たない人たちだから。「車がないと不便だから買う」という層で、周囲に「なんでそんなに変わった車を買ったの?」と言われないように、皆が知っている普通の車が欲しい。そして、彼らの購入の動機として最も重要なのがディーラーの近さだ。
スバルの場合、これらのすべてにおいて不利。米国では店の数が少ないから基本的に(ユーザーから)遠い。車はアフターサービスが大事だが、遠くまで行かなければならない。そうしたことを乗り越えてでも「買いに行きたい」という車を造ることができれば勝てるチャンスがあると、元々考えている。
セダン市場で”化けたら”・・・
――不利な条件を乗り越える魅力をスバルに感じる顧客が増えてきたと。
ブランドの魅力が増してきたら、遠くても買いに来てくれる。セダンが売れるかどうかは「スバルのセダンだったら遠くても買いに行きたいな」となるかどうか。今起きているのがそういうことであれば嬉しい。
レガシィセダンの販売台数は13年の倍になっている。ただ米国工場の生産能力に制限があるので、ここでも供給がネックになる。他社が毎月何万台と販売しているように、セダンの市場は分母が非常に大きい。ここで化けたら、今のような需給の逼迫はより深刻になる。(分母の小さい)SUVのカテゴリーで売れるのと、増え方の規模が違う。造り切れない。