スバル車に宿る、負けず嫌いの反骨精神 吉永社長が語る富士重工業の生きる道(下)

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”人類初”のチャレンジはできない

―米国工場では、資本提携先であるトヨタ自動車の「カムリ」の受託生産が16年末に終了します。今後のトヨタとの関係は。

この関係はとても大事だ。提携の中身は生産を中心としたものから、商品や技術を中心に軸足が移ってきている。私はそれが正しい方向だと考えているし、トヨタの豊田章男社長もそうだと思っている。

トヨタからしてみれば生産を委託できる会社はいくらでもある。そこにわれわれでなければダメだという必然性はない。当社の特質から考えると、トヨタ側からの魅力は商品や技術にある。トヨタと共同開発した「86/BR-Z」はうまくいっている。トヨタは水平対向エンジンのスポーツカーを造れないので、われわれが貢献できる。

逆に当社の弱点は、成長したといってもまだまだ小ぶりなので、単独で“人類初”のような技術にはチャレンジできない。ハイブリッドや燃料電池車は、今後の環境重視の時代を生き抜くためのキーワードだ。巨額の研究費がかかる技術の情報を手に入れる道だけはきちんと持っていないといけない。将来、気が付いたら負けていたという事態は避けたい。

12年に発売した当社初のハイブリッド車「XVハイブリッド」はトヨタに教えてもらいながら造った。今後発売を予定しているプラグインハイブリッド車も、トヨタの協力を仰ぎながら開発を始めている。

 スバルがスバルであるために

「よそと同じことをしたくないという思いが車作りに表れている」と吉永社長は自信を持って語った

――世界の競争環境を考えると「小粒でもぴりりと辛い」存在であり続けられますか。どこかのタイミングで、トヨタの傘下に入らざるを得ない、ということはないでしょうか?

トヨタからの出資比率は16.5%だが、お互いに今のままでいましょうということで合意している。私が思っているのは、富士重工業という会社は自立しているから魅力的な部分があるということ。そうでないと、スバルがスバルでなくなってしまうんじゃないかな。

販売やマーケティングでも難しいでしょう。入社した時からリーダーのマーケティングを勉強している人と、ニッチャーのマーケティングを考えている人は何十年も差があるから、全然違う。

負けず嫌いだったり、反骨精神だったり、よそと同じことはしたくないという思いがわれわれの車作りにも表れていて、そこに多くのファンの方々がついてきてくれている。その“意地”を失くすと、トヨタにとっても(スバルは)魅力的な会社ではなくなってしまうでしょう。

(撮影:今井康一) 

「週刊東洋経済」2014年12月13日号<8日発売>「この人に聞く」に加筆)

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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