〈ハンズフリーシューズ激戦期〉チヨダの"スパっと履ける靴"が大ヒットした裏側 「手を使わずしっかり履ける」で差別化、累計500万足販売へ
2021年の夏、靴小売大手・チヨダの社内。商品会議に向けて複数の試作シューズが並んでいた。確認にやってきたのは町野雅俊社長だ。その中の1つに、ピンとくる感覚があった。とにかく履きやすい。これなら顧客の不満に応えられる。
「やるぞ」。鶴の一声だった。
町野社長が選んだのは、手を使わずスパっと履ける「スパットシューズ」。立った姿勢でスムーズに履ける独自の構造が売りだ。
社長肝いりのPB(独自企画商品)として2022年に発売すると、全社で猛プッシュ。今やチヨダの看板商品の1つに成長した。今上期(3~8月)の販売足数は前年同期比7割増の123万足となり、2025年度中に累計500万足の達成を目指すまでになった。
発売前は売れる確信を持てず
スパットシューズは発売以降、毎年結果を残している。初年度となる22年度は15万足を販売、23年度は75万足、24年度は164万足。今25年度は250万足が目標だ。
4900~5900円の商品が多く、チヨダのほかの商品より20%ほど高い。そのため、全体の単価の引き上げや粗利益率の改善にも貢献しているのだ。
よほどの発明品かと思いきや、手を使わずに履ける「ハンズフリー」の靴自体は以前から存在していた。ただ、そうした商品がヒットした例もなかった。それだけに、市場を熟知するチヨダのバイヤーたちも、売れる確信はなかったという。
一方で、年配客を中心に「靴が履きにくい」「脱ぎにくい」という不満の声があることは確かだった。町野社長も楽に履ける商品はないかと長年考えていた。そんな2021年の夏、商品会議に登場したのがスパットシューズだった。


















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