「僕たちは死ぬまでレガシィを磨き続ける」 吉永社長が語る富士重工業の生きる道(上)
――数は追わずに、「100万台で打ち止め」ということはできないのですか?
それは現実的ではないでしょう。現在米国には621のディーラーがあって、一昔前は1店舗あたり年間350台も売れていなかったのが、今となっては800台になっている。ディーラーの経営者からすれば、店の規模の差はあるにしても、平均1000台は行けると考える。そこでメーカーとして「供給しません」なんてことを言ったら、極端にいえば訴訟ものですよ。
当社として高い台数目標を掲げたことは一度もない。ただ、買っていただけるものに対する供給責任は当然ある。今年、暦年で米国販売が50万台を超えれば、来年の全米ディーラー大会で50万台という目標を言えるはずがない。台数を減らそうとは言わない。伸び率が小さくてもプラスの数字。それが51万でもいい。
スバルが量を追うのは自殺行為
――少しずつでも数が増えていくことで、「スバルらしさ」が保てなくなるということはありませんか?
これだけ世界でスバル車に乗ってもらえる人が増えてくると、もっと増やしたくなるのが人の常。私も元々は営業部門だったから気持ちはよく分かる。営業が欲しくなるのは、より多くの量をさばけるコンパクトカーだ。しかし社内では「数を追えるクルマが必要という思考回路に入るな」といつも言っている。スバルの個性から離れて普通になってしまうから。
今、どちらかというとニッチマーケティングをやっている。経営学で引き合いに出される「スマイルカーブ」では、ニッチの事業に集中して特徴を出す会社の利益率が高い。成長したくなって商品数を増やしていくと収益性は下がり、もっと量を増やしてトヨタ自動車のような支配的地位になれば、また利益率は高くなる。
自動車というのは今となってはほとんど成熟産業で、これからトヨタや米ゼネラル・モーターズ(GM)のようには絶対になれない。われわれにとって量を追うのは自殺行為なんです。