佃 光博
今回は、2010年12月9日に東京・丸の内で開かれた「プロの採用コンサルタントが教える、ほかでは絶対聞けない実践的就職勉強会」を紹介したい。この手の就活セミナー、勉強会で講師を務めるのはほとんどが「就職コンサルタント」と呼ばれる人たちであるが、今回は違う。講師を務めたのは、20年以上にわたって数百社の採用を支援し、現在は人事全般の情報会社であるHRプロの代表取締役である採用コンサルタントの寺澤康介。HRプロには約7000人の採用担当者が登録している。つまり採用担当者の考えや行動を最も熟知する一人である。就職コンサルタントの説く就活の常識とはまったく異なる破天荒な内容で、学生たちの度肝を抜くとともに元気づけた。
後半は旭化成の採用担当である米田未央さんとのトークセッションがあり、その後は質疑応答タイム。1時間にわたって学生から質問が続々と寄せられ、寺澤と米田さんが丁寧に応答した。終了後の学生の表情は一様に晴れやかだった。就活セミナーとしては珍しいことだ。
●「社会人の感覚」「採用側の視点」に気づくマインドシフト
実践的就職勉強会は、採用コンサルタントの寺澤が「就活の常識」を否定するところからスタートした。多くの就職本や就職セミナーは、まず「自己分析」の重要性を説いているので、何も知らない学生は業界研究の前に自己分析を行おうとする。小さい頃から現在までの20年ほどの人生を振り返ろうとするが、うまく自己を描けず悩んでいる学生は多い。寺澤は、就職コンサルタントが作り上げたこういう常識に異を唱える。理由はシンプルだ。寺澤は仕事柄多くの採用担当者と話すが、「自己分析」を評価する人に会ったことがないのだ。むしろこういう誤った就活常識、ノウハウの蔓延を「困ったもの」と考える採用担当者がほとんどだ。
自己分析は無用という話は、今回の勉強会に参加した約120名の学生にとって大きな驚きだったろう。そして寺澤は、就職本や就職コンサルタントの常識にとらわれず、異なる視点を提示した。「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」(孫子が書いた中国の兵法書)である。
就活生が知らなければならない「敵」(向かうべき相手)は社会である。就活生は学生だが、採用選考は社会人の感覚を基準として行われる。だから「社会人の感覚」「採用側の視点」に気づくマインドシフトが重要なのだ。
寺澤は「自転車」を例に出して説明していた。自転車は乗れないときは、とても難しい乗り物のように思える。ところがいったん乗れるようになると、今度は簡単で快適な乗り物になる。なぜ乗れなかったのかが不思議に思えるほどになる。就活におけるマインドシフトも自転車に似ている。
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