そんな中、「若き老害」と呼ばれる私の政治に対する意識は過去最高に高まっている。青木大和氏との対談でも話題になり、彼があまりに知らなかったようなのでやや説教気味に語ったが、「一票の格差」をめぐる問題について、私は意識が高まりまくっている。世代間の人口の差もそうだが、この問題がある以上、「選挙なんていくらやったって無駄では?」と思ってしまっていたのだ。
深刻らしい。だが詳しく知らない「一票の格差」
民主主義の原則は1人1票。だが、今の日本の選挙制度では1票の重さは同等にならない。なぜなら選挙区ごとに人口と、当選人数に差があるからだ。私がこの問題に関心を持ったきっかけは、数年前「一人一票実現国民会議」のサイトを覗いたことだ。サイト内のこのコーナーで試算すると、私の選挙区である東京都第14区における1票の価値は、衆議院選で0.62票、参議院選で0.22票である。私の投じる票は全国的に1票の価値すらない。「1票の格差」とは、これほど明確に存在するものだと愕然とした。
この問題意識を胸に、私は六本木ヒルズ森タワーにあるTMI総合法律事務所を訪問した。この問題に詳しい、弁護士の升永英俊氏に会うためである。升永氏は、著名な弁護士である。このたびノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏の、日亜化学工業との裁判を手がけた弁護士だ。知っている方も多いことだろう。
今回の取材を経て、私は「一票の格差」問題に関心を持ちつつも、その背景・原理を全くわかっていなかったことを猛省したのだった。
「一票の格差」問題に関しては、何度も訴訟が起こり、ここ数年では最高裁、高裁などで勝利判決(選挙結果の違憲無効判決・違憲違法判決・違憲状態判決)が出ている。これは大きく報道されているので、ご存じの方も多いであろう。私はこれらの判決を勝ち取ったことは、適切な選挙実現に向けての大きな一歩であると考えていたが、升永氏は「選挙結果の無効化は目的でない。そこで国民とマスコミが満足しているのは、深刻な問題である」と指摘する。
「選挙結果の無効化」判決に喜んでいてはいけない?
升永氏曰く、現在の判決は簡単に言えば「一票の格差が2.0倍以上の条件で行われた選挙は違憲無効」であるというものである。つまり2.0倍未満ならばたとえ1.9倍や1.8倍の格差があろうとも、その選挙が有効になってしまうという由々しき問題が放置されたままになるのだ。
では、私たちは何を目指すべきなのか。升永氏は真に「一票の格差」問題を解決するためには、裁判所に「違憲無効判決」ではなく「人口比例が憲法の示すところであるという判決」を出させることが必要であるという。「人口比例」とは人口に対して1.0倍、つまり「一人一票」を持つ状態のことである。
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