日本の電力業界、海外展開では資本利益率とリスクコントロールに注目《ムーディーズの業界分析》
財務構造の改善は足踏み
燃料価格の急激な変化や、世界経済の大幅な後退といった極端な事態にならないかぎり、基本的に安定した収益構造に基づき、電力会社の純利益は安定的に推移することが見込まれる。07年3月期まではコストが漸減傾向にあったが、08年3月期以降、安定化供給のために、経年化対策(発電設備、送配電網のメンテナンスなど)や、環境対応(再生可能エネルギー、スマートグリッド対応を含む)のための投資が増加しており、設備投資は増加する見込みである。減価償却費も、これまでは投資の抑制を受けて漸減傾向にあったが、今後は増加に転じよう。
07年3月期までは、潤沢なキャッシュフローを背景に、電力各社の財務構造は改善傾向にあった。しかし、08年3月期以降、営業キャッシュフローの減少、設備投資の増加により、フリーキャッシュフローが悪化した。今後も従来よりは低水準で推移する可能性が高く、財務構造の改善、債務返済は足踏みする可能性が高い。
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