「会社に属さず働く人」、大抵の人が知らない現実 雇用スタイル変化に日本企業はどう対応できるか

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こうした時代背景の中で、フリーランスやギグワーカーが増えているという現実は、日本企業のあり方や産業のあり方そのものにも影響を与えるかもしれない。もっとも、現在のイノベーションのスピードやデジタル化の波は、企業が人を雇うシステムや求人の方法にも大きな影響を与えている。

たとえば、新卒一括採用に対抗するのは、「通年採用」と呼ばれるものになるのだが、最近は日本でもこの通年採用を導入する企業が徐々に増えている。もともと海外では、通年採用が常識で、大学を卒業してから求職活動を開始する学生がほとんどだ。大学生でなければできないことを優先させる傾向が強く、必ず4年で卒業するというのも常識ではない。

一方で、日本では政府が「就活ルール」を主導するようなシステムができている。2022年度卒の採用は、2021年3月に説明会の解禁、6月に選考解禁というスケジュールになっている。企業の求人に政府が介入する、というのも国際的には極めて珍しい現象と言っていい。

「ジョブ型雇用」を採用する企業も増えている

人材サービス会社の「ビズリーチ」が2020年9月に実施した調査では、通年採用を実施している企業は全体の「28%」にとどまっている。3分の1にも満たないのが現実だ。ただ、IT業界では大手企業でも通年採用が一般化しており、すぐに役立つスキルを持っている人材は、大学生、大学院生に限らず卒業直前まで常時採用活動を行っている。

ちなみに、日本特有の雇用システムも徐々に変化を遂げつつある。いわゆる「ジョブ型採用」を採用する企業が増えており、中には45歳定年説を打ち出す企業も出てきている。ジョブ型雇用とは、仕事に必要なスキルがあるかどうかが問われる採用方法で、欧米では一般的な方法といえる。それに対して、日本的な雇用スタイルは「メンバーシップ型雇用」と呼ばれる方法で、学歴や年齢といったものが優先されて採用される。

日本でも、このジョブ型雇用を採用する企業が増えており、たとえば日立製作所は2000年頃から技術系では「ジョブマッチング方式」と呼ばれる採用法を取り入れており、2021年春の新卒採用では新卒採用した600人のうち約40人がこの「デジタル人財採用コース」と呼ばれるスタイルで採用されている。従来のように全員をオールマイティーの人材として採用する方法とは異なるスタイルが定着しつつある。

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