「会社に属さず働く人」、大抵の人が知らない現実 雇用スタイル変化に日本企業はどう対応できるか
雇用の変化は、働く側にも変化をもたらしつつある。内閣官房が2020年に行った調査によると、全国の約7500人のフリーランスを対象に調べたところ、フリーランスとして働き続けたいと回答した人は「78.3%」に上り、「会社員になりたい(会社員に戻りたい)」と答えた人は「3.4%」にとどまるという数字が出ている。フリーランスという働き方を選択した理由では、「自分の仕事のスタイルで働きたいため」と答えた人が「57.8%」、「働く時間や場所を自由にするため」が「39.7%」の順で多くなっている。
こうした背景には、 時代の変化とともにデジタル化が進み、AIやロボットといった新しいイノベーションのスピードに、人間の能力がついていけてない中で、特別なスキルのない社員を一括採用することに意味がなくなってきているとも言える。にもかかわらず、日本企業が新卒一括採用にこだわるのは、マンパワーの力をいまも信じているからだろう。
人的資源は投資材料か単なるコストか
ただ、海外では企業の業績を判断する材料に「人材資源」というカテゴリーが組み込まれている現実もある。実際、アメリカ証券取引委員会(SEC)は、上場企業に対して人的資源に関する情報開示を2020年8月に義務付けている。社員教育や人材育成などの取り組みが投資判断の重要な指標として、数値化されて投資材料のひとつとして評価されている。その点、日本では企業会計の中で、人的資源はいまだに単なるコストとしてとらわれているにすぎない。
本来、一生をひとつの企業に捧げる日本式の雇用制度は、それに見合うだけの報酬があって初めて可能になる価値観といっていい。ところが、日本の賃金はここ25年間でわずかしか上昇していない。平成の30年間で上昇した平均給与は、わずか7万円というデータもある(国税庁、民間給与実態統計調査)。
そこに、企業にとってはさらに都合のいいギグワーカーという雇用形態が登場したことで、最近の労働市場はまた違った局面を見せている。最低賃金の対象外となるギグワーカー、たとえば一律数百円程度の均一料金で料理宅配を請け負うワーカーは、配達途中にけがをしても労災に該当しない。ギグワーカーは「労働者」として定義されていないために、雇用保険や健康保険、労災保険の対象とならず、あくまでも自営業者としてカウントされるからだ。
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