それについて、私が以前NHKの「すくすく子育て」(2018年1月5日再放送)という番組で見た内田伸子先生(お茶の水女子大学名誉教授・文化功労者)のお話が大変印象的でしたので、概略を紹介いたします。
優しく手伝う or 手伝わない、どっちが自立できる?
内田先生は、某幼稚園の年少の2クラスを1年間(合計3年間)研究観察しました。1組の先生は、子どもがボタンをはめられないときははめてあげ、靴下を履けないときは履かせてあげるなど、何でも優しく手伝ってあげる先生です。
2組の先生は、困っている子がいても「幼稚園生なのだから、自分のことは自分でやりましょう」と言うだけで、決して手伝ったりやってあげたりはしない先生です。
2つのクラスの子どもたちは、最初は同じ程度の自立度合いだったのですが、1年経つとはっきりした違いが出ました。なんと、手伝ったりやってあげたりする先生の1組の子どもたちのほうが、自立度合いが上がって自分で着替えたり靴下が履けたりできるようになったのです。
反対に、2組の子どもたちには、1年経っても「自分から着替えよう」という自主的な行動はあまり見られなかったのです。つまり、世間で言われていることと正反対の結果が出たわけです。
なぜそうなるのかと不思議に思う人も多いと思いますが、子どもの気持ちを考えれば不思議でも何でもないことがわかります。内田先生によると、1組の子どもたちは「先生に対する信頼感が育ち、自分でやってみようという意欲が育ったから」とのことでした。
私の考えも加えて言いますと、1組の子どもたちはその先生のことを信頼していて大好きなのです。その大好きな先生に、自分が靴下を履けるカッコイイ姿を見てもらいたい、先生の期待に応えたいという強い気持ちを持っています。
でも、能力が伴わないのでうまくいかないのですが、そういうときも先生はガミガミ叱ったりしないで、優しく手伝ってくれたり履かせてくれたりするのです。子どもたちは先生のことがますます大好きになり、ますます期待に応えたくなってがんばります。こういう日々の積み重ねで、1年も経つと大きく成長するわけです。
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