「実用性がないネット機器」自作する人の深い洞察 IIJで働く「IoT技術マニア」に見えている景色

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──無線LANもアマチュア無線もすべて電波なんですね。周波数の違い以外にも、実感できたことはありますか?

アンテナの形状でも変わります。アンテナも自作していまして、実際に作ってみると、形状によってどう飛び方が変わるのかがよく理解できます。

先日、アマチュア無線用のアンテナを作っていたら、設計をミスしたようで、東京にいるのに、広島や熊本のラジオが聞こえるようなAMラジオのアンテナができてしまいました。実のところ、こんな失敗談ばかりです。

知らずに乗っ取られるIoTカメラの危険性

──ところで、IoTは便利な一方、ハッキングに対する怖さを漠然と感じます。実際のところはどうなのでしょうか?

IoT対応の家の鍵を勝手に開けられるといった類いのハッキングは、あまり起きていません。けれども、別の観点で見るとハッキングが今大問題になっています。本人が気がつかないうちにIoT機器が乗っ取られているケースはとても多いんです。

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おそらくではありますが、監視カメラに非常に多いといわれています。自宅につけている方は少ないですが、インターネットで店舗の様子を見られるのが便利だと、防犯カメラの代わりにIoTカメラを設置する経営者の方は多くいます。

──IoTカメラは、どうやって乗っ取られるのですか?

問題は2個あります。まず、製品出荷時のパスワードがそのまま使われているケースです。製品ごとの初期パスワードは知られているので、簡単に乗っ取られてしまいます。また、セキュリティーホールが残されたままの製品が使われていることも問題です。その場合はパスワードがわからなくても、知られた手順を使えば乗っ取られてしまいます。

──乗っ取られた結果、どんなことに使われるのでしょうか?

多くの方は、カメラが盗み見られることを心配しますが、犯人の目的はそこではありません。乗っ取られた機械が、第三者に向かってサイバー攻撃を仕掛けるんです。1台のカメラの能力はたいしたことありませんが、大量にあることで力をもちます。

悪意をもった人がカメラに対して一斉に攻撃を指示すると、標的となったサーバーに大量の通信が集まります。いわゆるDDoS攻撃です。一般的な取引サイトであれば、一発で止められてしまいます。

──怖い話ですね。けれども、個人の努力だけではどうにもできない問題のようにも思えます。対策はされているのでしょうか。

きちんと考えられていない製品が出回っていることも問題です。国はIoT機器に対するセキュリティーの指針を作るなど対策はしていますが、海外の事業者にはなかなか届きません。また、NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)が、日本中のインターネットをスキャンして、サイバー攻撃に悪用される可能性がある機器を見つけた場合に利用者に注意喚起するなど、撲滅のために動いてはいます。けれども、数が多すぎて追いつかなくなっています。

私は、IoTの新しい使い方を考えようといったところで面白おかしくやっていますが、一方で「IoTを使うときはちょっと考えてね」という発信もしています。インターネットが崩壊しかけている面もあり、それを食い止めるための活動もやっているんです。

正直なところ、ネットの仕組みをよくわからないまま使っている人は多いのではないだろうか。しかし、IoT機器が悪事に利用されることがあると聞くと、少しは知識を持って使ったほうがいいのかなとも思う。しかしやっぱりネットは難しい。どうやったら理解できるのか。これを考えると「堂前さんは実用性がないものを作って遊んでいる」という事実に気がつく。そうか、それで知識が身につくのか。筆者が最初に疑問に思った「何の役に立つんですか?」は完全に愚問だったようだ。
高橋 ホイコ ライター

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たかはし ほいこ / Hoiko Takahashi

1976年生まれ。国民生活センター勤務を経てフリーライターに転身。ウェブメディアを中心に執筆中。企業の一風変わった取り組みへの取材を得意とする。趣味はホルン演奏、ピンクのガジェット収集、交通インフラの豆知識集めなど。トマトマンの斜め上行く生活術管理人。

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