「実用性がないネット機器」自作する人の深い洞察 IIJで働く「IoT技術マニア」に見えている景色

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──そういったモノ作りが、仕事につながった例はあるのでしょうか?

私の担当ではありませんが、田んぼに水位センサーを設置して、iPadの画面で確認できる農家向けの製品を当社で売っています。

IoTは、センサーでデータを取ってインターネットと連携することが基本です。このシステムでやっていることは、私が好きでやっていることと本質的には同じです。ほかにも獣駆除用のわなに使うという話も出ています。わなに重りセンサーをつけて、獣が入ったら通知がくる……となると、IoTはかりと同じなんです。

IIJが手がける水田センサー(写真:堂前さん提供)

社内の私の世代にはそういう人がわりと多いのですが、業務と趣味の境目が非常に曖昧です。双方で同じ技術を使っているんです。

通信の理解にアマチュア無線が役立つ!?

──アマチュア無線も趣味にしていると聞いたのですが、これもIoTとのつながりがあるのでしょうか?

最近のIoT業界では、電源が取れない場所でも使えることが重要な要素になってきています。インターネットのエンジニアは基本的に有線通信を扱います。使ってもせいぜい無線LAN程度です。けれども、ほかの通信を扱い始めると電波に関する知識が必要になってきます。

電波はどう届くのか、障害物にぶつかったときにどう拡散しどう回り込むのか、といった知識が必要になります。それで面白そうだなと思ったのでアマチュア無線の免許をとりました。

──無線LAN以外の無線通信というと、どういったものがあるのですか?

先ほど話した田んぼのシステムには LoRaWAN (ローラワン)という無線装置が使われています。スマホで使われている通信とは違い、電池だけでワンシーズン動くようなものです。

田んぼに太陽電池を置くと影ができてしまうので、少し離れた場所にゲートウェイ装置を設置します。田んぼに設置した水位センサーとゲートウェイ間をLoRaWANで通信し、ゲートウェイで変換してLTEでクラウドに送信しています。

ソーラー付きゲートウェイ装置(柱の上部)。田んぼから少し離れたところに設置、太陽光発電パネルで電源を取っている(写真:堂前さん提供)

──LoRaWANとアマチュア無線にはどういうつながりがあるのでしょう?

電波は周波数で特性が変わります。例えば、昔、ソフトバンクが「プラチナバンドがないからつらいんだ」と訴えていたことがありました。800MHzや700MHzあたりの周波数のことです。この電波は、建物に当たっても回り込みやすい性質があります。それに対して1.7GHz、2GHzといった電波は、建物に当たると止まってしまうため、多くの基地局が必要になります。このくらい性質が違ってきます。

Wi-Fiは主に2.4GHzを使うのに対し、LoRaWANは900MHzを使います。対して、アマチュア無線は周波数が低いところでは1.9MHz、高いところでは1.2GHzといったいろんな帯域を使わせてもらえます。実際に無線機を持ってうろうろすると、電波の届きやすさが実感できるんです。

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