「実用性がないネット機器」自作する人の深い洞察 IIJで働く「IoT技術マニア」に見えている景色

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インターネットイニシアティブ(IIJ)の堂前清隆さん。趣味と仕事の境目がない生き方とは?(写真:筆者撮影)
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この連載では、社業を極める「オタク」たちに焦点を当てている。そこに仕事を楽しむためのヒントがあると思うからだ。
今回インタビューしたのはインターネットイニシアティブ(IIJ)の堂前清隆さん。IoT技術(=「モノ」をインターネットに接続する技術)を使って面白いものを作りブログやYouTubeで発信する趣味をもっている。彼の作品は実用性がないものが多い。しかし、それは意識的にやっているのだという。なぜなのか。そこには「ネットは難しい」と悩む人に知ってほしい意図があった。
IIJはいわゆる“ネット”の会社だ。1992年にISP事業でスタートし、ネットワークサービス事業を展開してきた。最近ではMVNO(格安スマホ)でその名を聞く人も多いだろう。売り上げは2020年度で2130億円。10年前と比べて2.5倍以上という伸びである。
およそ4000名の従業員のうち7割が技術職だ。堂前さんは2001年にエンジニアとして入社。趣味が会長の目にとまり広報にコンバートされてきた。広報といっても会社を宣伝するというより、インターネットやMVNO技術を解説することに主軸を置いている。肩書は、広報部副部長兼MVNO事業部シニアエンジニアである。

意識的に“実用性がわからないもの”を作っている

──IoT技術を使ったモノ作りが趣味だそうですね。どういったモノを作っているのでしょうか?

例えば、これは私が作った時計です。Wi-Fiでインターネットに接続して時刻合わせをします。最近は回路が全部入ったモジュールが売られているので、簡単な工作をするだけで、こういったものが作れます。

──「電波時計で十分では……?」と思ってしまったのですが、何の役に立つのでしょう?

そうなんです。これは結構大事なポイントで、実用性がよくわからないものを作って試しているんです。もちろん遊びの要素もありますが、何かほかに展開できるのではと試行錯誤している面があります。

製品化されたIoT家電を使うだけでも楽しいですが、かゆいところに手が届かないと感じることがあります。これが実際に作ると納得できるんです。実現できない事情や、手間やコストの問題まで踏み込んで理解できます。

──なるほど。作ってみることで、わかることがあるんですね。具体的にどういった気づきがありましたか?

“IoTはかり”なるものを作ったことがあります。日常的に使う物で、気がついたらなくなっているものってありますよね。このトレーに入れて管理すれば、在庫がなくなったときにスマホに通知が来ます。重さを感知しています。これが、作ってはみましたが実用性はイマイチだと感じました。実際に同じ物をたくさん棚に置くことを考えると、どこか面倒なんです。

これがIoTはかり(写真:堂前さん提供)
次ページ業務と趣味の双方で理解を深め、同じ技術を使用している
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