5Gで「自分だけの牡蠣」が作れる時代が来る 見えてきた「次世代通信規格」の使い勝手とは
日本の通信事業者の取り組みは遅れていない
――広島県における「スマート牡蠣養殖」は、通信技術を使った地域創生の実証実験ですね。
中尾:広島には地域の企業が最新のテクノロジーを活用する「ひろしまサンドボックス」という県主導の取り組みがあり、われわれもそれを利用させていただきました。NTTドコモの中国支社やドローンを製作している地元のベンチャー企業と共同で、通信技術を使ったデータに基づく養殖の研究を進めているところです。
センサーを海中に沈め、水温や塩分濃度など養殖のデータを取ったり、養殖場の海面を上空からドローンのカメラで捉え、牡蠣の産卵のタイミングをつかんだり、潮流による幼生の浮遊をシミュレーションしたりといった研究をしています。
牡蠣の産卵が始まると、海面が数時間から1日ぐらい白く濁るのですが、人間の目だと産卵なのか太陽の反射なのかわかりづらい。そこでドローンで撮影した画像を使い、われわれが開発したAI(人工知能)で判定しています。
地上に比べて通信が難しいことと、水中にセンサーを入れるので、シールが甘いと水が入ってショートしてしまったり、塩害で機器が壊れたり、長く水中に置く間に大量の生物が付着したりといった問題がありました。
もう1つの壁は地元の理解を得ることでした。第1次産業に従事している方は日々の仕事で忙しくて、なかなかICT(情報通信技術)の利用にまで時間を使う余裕がないのですね。今回は幸い、ICTに興味を持つ漁業従事者にご協力いただけましたが、これを機に「データを取り、それを利用して管理する」という考えが現地で広まればうれしいです。
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