5Gで「自分だけの牡蠣」が作れる時代が来る 見えてきた「次世代通信規格」の使い勝手とは
――現在の研究との関係では、5Gにどういった期待をお持ちですか。
中尾:現状では動画をリアルタイムで伝えられるだけの無線の容量がないため、ドローン撮影ではいったんSDカードに録画し、1飛行ごとにデータを回収しています。大容量の5Gになれば4K、8Kの映像もリアルタイムでスマートフォンで確認できるようになるでしょう。すると「あ、今日は産卵があった」と気づいて、すぐ船を出して対応するといったことが可能になってきます。
もう1つの期待は通信範囲の広さと低遅延です。広島では水中ドローンで牡蠣棚の様子を撮影する実験もやっていて、いまは人間がWi-Fiで操作しているのですが、沿岸からだと電波が届かないことがあります。
そこを5Gで置き換えると、沿岸から安全に運行でき、操作へのドローンの反応も早くなり、かつ操作しながら水中の映像がリアルタイムで見られるようになるでしょう。このユースケースは、5Gの特徴である、「大容量通信」による高精細映像配信と「低遅延通信」によるドローン制御という2つの特徴を駆使しています。
5Gの特長の1つである低遅延は、自動運転の実現も後押しするでしょう。われわれはいまNTTドコモと、事故が起こりやすい交差点や首都高の合流ポイントなどに5Gの通信アンテナを置き、路車間通信で車を制御し、事故をなくす「協調運転」の研究を続けています。
人間の判断では事故が防ぎきれないシーンでは、人による操作に代えて、路面に設置した制御装置が各車を動かして事故を防ぐ。これも現状の通信回線では無理ですが、5Gなら可能性が開けてきます。
ソフトとハード両方を知っている人材育成が必須
――仮想化された機器の開発のためには、ソフトウェアに詳しい人材が欠かせませんね。
中尾:ソフトとハードの両方を知っている人材を育てなければいけません。私の大学のラボでは、学生たちが懸命に基地局用のソフトウェアを作ったり、論文を書いたりしていますが、国全体でもそうしたソフトウェア教育を重視していただきたいですね。
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