中国の動画配信大手の愛奇芸(iQIYI、アイチーイー)は3月4日、第三者割当増資により2億8500万ドル(約329億円)を調達すると発表した。同社の親会社である中国のネット検索最大手の百度(バイドゥ)や、香港の投資会社オアシス・マネジメントなどが参加する投資家コンソーシアムが増資を引き受ける。
今回の増資で、愛奇芸は(議決権が異なる)2種類の新株を発行する。そのうち1億6500万株のB種普通株を百度が取得、3億500万株のA種普通株をその他の投資家が取得する。
愛奇芸の増資の狙いは、同社が目下直面している2つの深刻な危機を乗り切るため、経営立て直しの原資を確保することにある。1つ目の危機は、有料会員数の減少に歯止めがかからないことだ。会員費の値上げとコスト削減で業績改善を図っているが、目立つ効果は上がっていない。
2つ目の危機は株価の低迷(による資金調達能力の低下)だ。愛奇芸を含む中国の動画配信大手は長期にわたって赤字体質を脱却できず、しびれを切らした投資家の手仕舞いが続いている。アメリカのニューヨーク証券取引所に上場する愛奇芸のADS(アメリカ預託株式)は3月3日の終値が4.8ドル(約555円)と、過去1年間で8割以上も下落した。
コストカットの人員整理に着手
3月1日に愛奇芸が開示した2021年10~12月期の決算報告によれば、同四半期の売上高は前年同期比0.94%減の73億8900万元(約1351億円)。純損益は17億6500万元(約323億円)の赤字で、損失額が前年同期より15.2%膨らんだ。赤字体質の最大の要因は、動画コンテンツの調達や制作にかかる費用を抑制できていないことだ。
一方、2021年10~12月期の1日当たり平均有料会員数は9700万人と、直前の7~9月期より770万人も減少。1億人の大台を割り込み、3年前の水準に後退してしまった。
こうした厳しい状況のなか、愛奇芸は2021年12月から大規模な人員整理によるコストカットに着手。部門ごとに社員の2割から4割が解雇の対象にされた。
「われわれは売り上げと市場シェアの維持を前提に、雇用、コンテンツ、マーケティングの費用削減を進めていく」。愛奇芸の龔宇CEO(最高経営責任者)は2021年10~12月期の決算説明会でそう語り、さらなるリストラの敢行を示唆した。
(財新記者:関聡)
※原文の配信は3月4日
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