中国の動画配信サービス企業の業績伸び悩みが目立つなか、大手の一角を占める愛奇芸(iQIYI、アイチーイー)が大規模なリストラに着手したことがわかった。財新記者の取材に応じた複数の従業員によれば、12月初めから過去に経験したことがない厳しさの人員カットが始まったという。
愛奇芸の2020年の決算報告書によれば、同年末時点の従業員数は7721人に上る。今回のリストラの程度は社内の部門によって異なるが、人員のカット率は平均20%前後、部門によっては40%近い模様だ。財新記者は事実関係について愛奇芸に問い合わせたが、12月7日までの時点で回答は得られなかった。
前出の従業員たちによれば、今回のリストラの背景には、ここ1年の間に生じた愛奇芸の経営戦略の急旋回がある。
同社の龔宇CEO(最高経営責任者)は、2020年末の時点では「現段階で最優先すべきなのは規模拡大であり、収益はその次だ」と公言していた。しかし2021年の半ばになると、龔氏は社内会議で「目下の優先課題は収益の確保であり、規模拡大はその次だ」と発言し、優先順位が修正された。
コンテンツ確保の負担重く赤字拡大
さらに、11月17日に発表した2021年7~9月期決算の説明会で、龔氏は経営戦略の転換を公に表明し、次のように述べた。
「愛奇芸にとって現在の重点課題は、赤字を減らし、コストを制御することだ。そのために不採算事業や視聴率の低いコンテンツを整理し、現金収入を増やす手立てを追求しなければならない」
今回のリストラは、そのような龔氏の考えに従って実行に移された。同社の従業員によれば、「儲けが出ていない」部門ほど人員のカット率が高く、黒字の部門では目に見える(リストラの)影響はないという。
動画配信サービスは、有料会員を増やすために人気コンテンツを絶えず確保し続けなければならない。そのため、会員数の上乗せで増収を実現しても、(版権料や製作費の負担がかさんで)増益につながらないジレンマに陥りがちだ。
愛奇芸の経営も楽観できない状況にある。2021年7~9月期決算では、売上高は75億8900万元(約1347億円)と前年同期比5.6%増加したものの、純損益は17億700万元(約303億円)の赤字を計上。赤字額は前年同期より5割近く増加した。この業績が開示されると、アメリカのナスダックに上場する同社の株価は1日で17%も暴落した。
(財新記者:関聡)
※原文の配信は12月7日
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