ネット出前や旅行予約などの生活関連サービスを手がける中国の美団(メイトゥアン)は11月26日、2021年7~9月期の決算を発表した。売上高は488億元(約8808億円)と前年同期比37.9%の増収を達成。その一方、投資損益やストックオプションなどを控除・調整した非国際会計基準ベースの純損益は、前年同期の20億5000万元(約370億円)の黒字から55億2600万元(約997億円)の赤字に転落した。
純損益の大幅な悪化は、中国政府から科せられた罰金の支払いを損失として7~9月期に一括計上した影響が大きい。中国の独占禁止法の執行機関である国家市場監督管理総局は2021年10月8日、美団が自社のネット出前サービスを利用する飲食店に対して求めていた「二者択一(取引先に対して競合他社とは取引しないよう迫る行為)」を独禁法違反と認定した。
これにより、美団は独占契約の保証金として飲食店から徴収していた12億8900万元(約233億円)の全額返却と、34億4200万元(約621億円)の罰金の支払いを命じられた。同社にとって、この罰金額は2020年の国内売上高の3%に相当する。
罰金の損失を7~9月期に一括計上したのは、将来の業績への影響を断ち切るためだ。「わが社は(飲食店と結んだ)すべての独占契約を取り消し、保証金を返却した。今回の罰金が会社の財務に与える影響は限定的だ」。美団CEO(最高経営責任者)の王興氏は、決算説明会でそう説明した。
稼ぎ頭のネット出前は2桁の増収増益
だが罰金の影響を差し引いても、美団の経営は必ずしも順調とは言えない。本業の収益力を示す営業損益は、7~9月期は101億元(約1823億円)の赤字であり、そのほんどが新規事業の損失である。損益計算書の「新規事業およびその他事業」の項目に計上された赤字額は、前年同期の5倍の109億元(約1967億円)に上る。
なかでも大きな損失が生じているとみられるのが、「社区団購」と呼ばれる地域コミュニティー向けのオンライン共同購買サービスだ。美団の社区団購サービスについて、王CEOは「事業の成長速度は当初想定を下回っているが、今後も投資を続けて冷凍・冷蔵物流を含むサプライチェーンを改善し、経営効率を徐々に引き上げていく」とコメントした。
美団にとって幸いなのは、最大の稼ぎ頭であるネット出前サービスが好調を維持していることだ。7~9月期のネット出前の売上高は前年同期比28%増の265億元(約4783億円)、営業利益は同14%増の8億7600万元(約158億円)と2桁の増収増益を達成した。
(財新記者:銭童)
※原文の配信は11月26日
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