体内の余剰エネルギー燃やす「チリツモ」の超工夫 身体活動時代謝「ニート(NEAT)」を増やそう

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コロナ禍で在宅時間が増えたため、NEATも大幅に奪われることになり、これまでにない極端な運動不足状態に陥っています。

NEATの代替手段として生まれ、日本でも1980年代から急速に広まったのがフィットネスという概念で、それを実現する場がフィットネスクラブです。多数の人が閉じられた空間のなかで過ごし、また器具を共有する場であることから、この2年間、退会者や休会者が増え、残念ながら閉鎖する施設が相次ぎました。

コロナは健康に決定的なダメージを与えている

ある著名な政治家が、「25年の不況にコロナがやってきて、私たちの生活に決定的ダメージを与えている」という趣旨の発言を各所でしています。なるほどと思いましたが、この経済的不利益とまったく同じことが、私たちの健康にも起こっています。「長年の運動不足の状態に、コロナがやってきて、私たちの健康に決定的なダメージを与えつつある」のです。

現代病といえる肥満症やメタボリックシンドローム、生活習慣病が生まれたのは、私たちの生活で特段にスポーツ活動が減ったからではなく、NEATが著しく減ったからです。電車やバスなどの交通公共機関や自動車、エスカレーターなどによって歩行の機会が減り、近年のICTの発展と普及によって、仕事の在り方も日常生活も変化しました。

その結果、消費エネルギー量が落ち込み、私たちの体に起こったのがエネルギーの余剰状態です。そして、それが続くことで肥満、高血糖、脂質異常症、高血圧といった問題を引き起こしているのです。

それでも、2年前までは通勤や通学、買い物や外食などで、ある程度は体を動かす機会がありました。しかし、コロナ禍になってリモートワークやリモート授業などが推奨されたことで、最低限の身体活動も奪われてしまいました。

今はまだ国内外とも感染対策が最優先の課題で、運動不足があまり大きな問題になっていませんが、これは長い目で見た場合、感染症と同等かそれ以上に大きな問題になることは間違いありません。

実際、それはすでに数値になって現れています。スポーツ庁では全国の6歳から79歳までを対象に体力テスト(体力・運動能力調査)を行っていますが、2020年度の調査結果は、成人男女のほとんどの年代において、2019年度よりも低い数値を示しています。さらに1年を経過した2021年度の結果は推して知るべし、でしょう。

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運動不足は体だけではなく、私たちの心にも悪い影響を与えます。そもそも動物は体を動かさなければ食料を確保して生きることができませんから、運動は私たちの心理状態をマイナスではなく、プラスに導くようにできています。

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