運動をすると、心理的安定をもたらすセロトニンや、気分の高揚をもたらすβエンドルフィンの分泌が増えますし、ストレスホルモンであるコルチゾール、アドレナリンが減少するので、気持ちが落ち着いてスッキリするのです。運動は面倒だけどやってみると気持ちがいい。これは、誰でも経験したことがあるはずです。
一方で、運動不足は心身両面の健康を損なう怖いものです。
細菌やウイルスが即時的に体にダメージを与えるのに対し、運動不足は静かに蓄積しながら、じわじわと体をむしばんでいくので、気がついたときには心身ともに健康度が下がり、心筋梗塞や脳梗塞といった事態におちいりかねません。運動不足で体脂肪が蓄積し、心肺機能が低下すれば、免疫力が下がって感染症にかかった際のダメージも大きくなります。
私たちの健康にとって運動は必須! とはいえ、前時代的な不便な生活に戻すことは非現実ですし、そこまでする必要もありません。ですが、生活を見直すことは必要です。私たちは「便利」という言葉に惹かれ過ぎ、必要以上に機械に頼り過ぎていないでしょうか?
今は「できるだけ座る時間を短くする」
例えば、指1本で商品や食事をオーダーして宅配便で届けてもらうのは便利ですが、歩ける距離のお店でそれですませる必要はあるのでしょうか。スマートスピーカーに声をかけるだけで電気をつけたり、エアコンをつけたりできるのは便利ですが、病気で動けないとき、育児や介護で手を離せないといった非常時を除いて、はたして本当に必要なことでしょうか。
もちろん今の状況下では、自身と周囲の感染リスクを下げることが第1ですが、その1点だけに注力してしまうのは、長い目でみると健康にとってはマイナスです。「マスク、手洗い、他者との距離の確保」などの感染対策を守りつつ、必要以上にITCを含めた機械に頼り過ぎないことが、運動不足を防いで健康な心身を取り戻す第一歩になります。
今すぐやるべきことは「できるだけ座る時間を短くする」ことです。コロナ禍以前から日本人は座っている時間が世界で最も長く、平均して1日7時間程度も座っているといわれていました。リモートワークなどの素ごもり生活によって、今はさらにその時間が増えていることは間違いありません。
イスに座っている状態は、筋肉をほとんど使わない無重力に近い状態にあり、特に下半身の筋肉はまったくといっていいほど負荷がかかっていません。近年はハイバックで座り心地のよいイスが増えていますが、背もたれに頼りっぱなしでは、下半身だけでなく、大切な腰周りの筋肉も衰える一方です。
イスに座る時間を減らし、立つ時間を増やすことが第一歩。それだけでも運動量を増やすことができます。実際、ただ立つだけでも座っている状態より1時間あたり10kcal近くエネルギー消費量が増えます。一見小さい差のようですが、1カ月、1年と長期的に見ると、大きな差になります。
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