妻の姓にした夫に「もったいない」という人の心理 夫婦別姓が進まないさまざまな理由を探る

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

──男性が「男らしさをおりる」ために必要なことは何でしょうか。

男性たちは「弱い自分」を、社会が受け入れてくれると思えずにいます。「勝ち組」「負け組」でくくる社会のありようや、「弱い立場」の女性たちが、昇給・昇進などで不利益を被っている様子を、目の当たりにしているからです。男たちは社会からはじき出されることへの恐怖心のため、男らしさに依存せざるをえないのです。

「男らしさをおりる」ためには下にクッションが必要でしょう。友人や家族、社会に受け止めてもらえるという安心感を醸成することが課題です。たとえば職場の男女格差が改善されて女性の「稼ぐ力」が上がれば、社会が男性に「おりる」ことを認める方向に向かうかもしれません。

しかし、実際には女性の働き方も変わり、女性もまた「稼げなくてはいけない」「強くなくてはいけない」というプレッシャーを感じながら生きる社会になりつつあるように思います。

そのような意味では「強くない自分」の居場所をつくる、つまり自分たちが「傷つく権利」をこの社会に認めさせるということは、男女双方の課題といえるかもしれません。

なぜ賛成派と反対派の議論がかみ合わないのか

──近年、選択的夫婦別姓の議論が活発化した背景を、どのように分析しますか。

かつて選択的夫婦別姓は、イエ制度の解体やフェミニズムの文脈から語られていました。それが近年、職場で同姓制度の不便さを訴える女性が急増したことで問題意識を持つ人が増え、議論が活発化しました。働く女性の夫たち、改姓による事務コストを抑えたい企業経営者ら、議論と無縁でいられない人が増えたことは大きいと思います。

ただ選択的夫婦別姓に反対する人は、戸籍や夫婦同姓の制度を守るべき伝統であると考えている人が多いです。寺社や古くから伝わるお祭りのようにコストがかかっても守るべき文化と考えているのです。

一方、賛成派は時代に合わなくなった制度とみなし、不要だと主張します。伝統的な文化なのか、実用的な制度なのか。そのような両者の認識の違いが議論をかみ合わなくしていると感じます。

次ページ選択的夫婦別姓への熱量はさまざま
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事