妻の姓にした夫に「もったいない」という人の心理 夫婦別姓が進まないさまざまな理由を探る
ほぼすべての国が夫婦別姓を選べるなかで、かたくなに「夫婦同姓」を守り続ける日本。法務省の2017年の調査によると、「選択的夫婦別姓」への法改正に賛成する人の割合は42.5%と、反対の29.3%を大きく上回り、職場で旧姓を使う女性たちが、不便を訴える声も強まっている。
しかし制度導入が検討されるたびに、一部議員の激しい反発などで頓挫し、昨年は最高裁で、夫婦同姓を定めた民法などの規定を合憲とする判断が下された。選択的夫婦別姓が実現しないのは、なぜか――。
妻の姓を選択した男性としての見方をまとめた『日本のふしぎな夫婦同姓 社会学者、妻の姓を選ぶ』の著者である中井治郎氏に聞いた。
妻の姓を名乗ったら想像以上に大変だった
──なぜ妻の姓を選んだのでしょうか。
結婚前、現在の妻が「うちは3人女だから、私が結婚したら名字はなくなっちゃうんだよね」と話したことがきっかけです。それを聞いて、妻も彼女の両親も「女性は夫の戸籍に入るもの」と、最初からあきらめているという事実の理不尽さに、カチンときたんです。一方、僕には兄がおり、家のことは任せられるので「僕が名字を変えようか」と申し出ました。
しかし、実際に妻の姓を名乗ると、仕事上の署名と納税手続きなどに使う戸籍名が違うことについて、問い合わせが相次ぐなど想像以上に大変でした。
男性にとって、結婚改姓はスルーされがちなテーマです。男の本音や実感を語ることで、男性にも「ひとごとではない」という認識を持ってもらいたいと考え、昨年末、体験を本にまとめました。