ギャラを「安く提示される人」から抜け出す秘訣 ナメられず買い叩かれないために必要な考え方

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角田:そういうことだね。その人はその10分で僕のことを知ったんだね。

加藤:もちろん初めてお会いして普通に話した後は、それぞれきちんと相手をリスぺクトし合えばいいと思うけど、「最初の出会い」で言えば、嫌らしい言い方だけど「知ったもん負け」の状況を作ることはある程度可能じゃないですか。

角田:うんうん。

加藤:「本」というのもわかりやすいし、角田くんの名刺の裏のような実績集みたいなものも、「会って見せる」ではなくて、会う前に実績が見えた状態になっているとより良いのかな、とか。少しでも「知ったもん負け」の状況を作れると、自分に対して値付けをする時に少し楽になるんじゃないかな。

角田:そうすると、少なくとも向こうが下手に出る可能性が高まる、と。

加藤:その時に、「ただ知ってるだけ」というのでもよくないよね。そこにリスぺクトがなければ、ただ「はあ、なるほど」で終わっちゃうわけだから。
 結局、「自分の仕事がどれだけその人にとって魅力的か」を前もって見せていくことは必要ですよね。

結果だけではなく「過程」を見せる重要性

加藤:さらに言うと、「過程を見せる」ことも大切で。成果を認めてもらえるとして、そこに至る過程が言語化されていると、「なるほど、こういうふうに考えて、こういうアウトプットを出す方なんですね」と相手が理解してくれるから、また違う「知ったもん」が増える。

角田:そうだね。

加藤:質問者の方は「アートディレクター」とのことだけど、アートとかビジュアル的なものって、中には「パッと思いついたんですよね」的なことを言う人がいて、誤解されてる部分もあると思う。

『仕事人生あんちょこ辞典: 50歳の誤算で見えた「ブレイクスルーの裏技45」』(KKベストセラーズ)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

角田:「『パッと』だから、ギャラはこれだけでいいですよね」みたいに言ってくる人っているよね。

加藤:でも実際には、そこに至るまでに結構考えたから、その結果が出てるわけだ。「こういう発想ができるようになるまでには、こういう修業を積んでるんですよ」ということを嫌らしくなくお伝えすることができれば、相手もその価値がわかるのかな。

角田:ピカソだったと思うけど、あるカフェで店員さんに「何か描いてください」と頼まれた時、ナプキンかなんかにピロッと描いて「これは何万フランだ」みたいに言って、相手が「ナプキンに描いただけじゃないですか」と言ったら、「ここに至るまでに積み重ねがあるんだよ」って答えたっていうエピソードがあったよね。

加藤:だから「アウトプットだけ見せてるのは実は損かも」という気もします。

角田:そうだよね。だからやっぱり結果だけじゃなくてプロセスを見せていく。『仕事人生あんちょこ辞典』でも「履歴書」の項目のはじめに何度か書いてるけれど、これが基本的にいろんなことの解決策だと思うな。

(本連載の過去記事はこちらからご覧になれます。次回は4月6日に更新予定です)

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角田 陽一郎 バラエティプロデューサー/文化資源学研究者

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かくた よういちろう / Yoichiro Kakuta

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者。東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビ入社。「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」「オトナの!」など主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社goomoを設立。2016年にTBSを退社。映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出など多様なメディアビジネスをプロデュース。現在、東京大学大学院博士課程にて文化資源学を研究中。著書:小説『AP』『最速で身につく世界史/日本史』『なぜ僕らはこんなにも働くのだろうか』他多数。週刊プレイボーイにて映画対談連載中、メルマガDIVERSE配信中。

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加藤 昌治 作家/広告会社勤務

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かとう・まさはる / MASAHARU KATO

作家・広告会社勤務。千葉県立千葉高等学校卒。1994年大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』(CCCメディアハウス)、『発想法の使い方』(日経文庫)、『チームで考える「アイデア会議」考具応用編』(CCCメディアハウス)、『アイデアはどこからやってくるのか 考具基礎編』(CCCメディアハウス)などがある。

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