加藤:アートディレクターさんのお仕事の場合はなにかしらのアウトプットがあるわけでしょう。だから質問の意図からすると、ご自身が納品したもの、ないしは作ったものに対する値付けのやり方を知りたいってことかな?
角田:確かにその相場って僕も言いにくいよ。「この仕事でこれだけください」とか言うわけでしょう?
加藤:でも角田くんも実際仕事をしてお金を貰っているわけだよね。どうしてるの?
角田:僕がプロデュースをやる時は、まず全体予算があって、そこから資材費とか撮影費とかあらゆる必要経費を抜いていって、余ったものを人件費にしてる。
その人件費の中で、例えば僕がプロデューサーで、加えてディレクターがいて、さらにADがいて……とか何人かスタッフがいるでしょう。それが4人だったら、仮に人件費が40万円だったら「10万ずつかな」とか、「でもこのディレクターには15万あげたいよな」とか思うと、「じゃあ僕は5万でいいや」となる。
こっちもプロデューサーだから、「これだけ人足かかる、これだけ美術費が、撮影費が……」みたいにプロジェクトの規模から予算感を数値化できるわけだよ。それを念頭に、それより安いならその仕事はさすがに受けないけれど、全体を算出した中で余ったお金を自分のぶんにしてる、みたいなことですかね。
「ギャラ交渉」は他者任せのほうが合理的?
角田:この質問者さんはアートディレクターさんだということだけど、こういうのってほんとに言い値だよね。極論すると、じゃあ油絵で何千万とか何億とかする作品だといっても、資材費は何千円でしょう。キャンバスと絵の具くらいで。
加藤:それはそうだね。
角田:そういう時、お金を払う方は極力その「何千円」に近いほうの提示をしてくるものだから、どこで金額を決めていいのかと言うと、本当に決まらないね。
加藤:その、いわゆるその油絵みたいなファインアートの価格はギャラリー・画商が決めてくれてるのかな?
角田:そういう世界はギャラリーが決めてると思う。むしろ商業画家になればなるほどキャンバスの単価で決めちゃってたりするよね。
加藤:「○号ならいくら」みたいな話。
角田:その「○号ならいくら」のランクを上げてくのがギャラリーの仕事なんだろうね。これまで1号の作品が20万だったところ、次の作品は30万円で売れるかとか。
加藤:アートの話でいうと、まず「自分で自分の値段を言うのか」という話があるよね。自分からは言いにくいというかさ。絵画の場合、画商、ギャラリーさんみたいに自分の価値を知ってくれてる人がいて、その人に言ってもらうことで言いにくさを軽減するという部分はあるのかな。