絶対知るべき「知ったもん負けの法則」とは?
加藤:あんちょこ的な回答になるけれど、個人的に「知ったもん負けの法則」ということを言ってるんです。書籍とかがいい例なんですけど、本を書くと、それを読んでくれる読者の人がいますよね。その読者の方と初めてお会いした時には、一番わかりやすいフレーズで言うと「読みました」ってなるわけです。で、そこでちょこっと関係性が決まってしまうんですね。
名刺交換する時って、なんとなく目上の人は名刺を上から、そうじゃない人は下から出す空気があるけれど、本を読んでくれた方とのやりとりでは、読者の方が「下から名刺を出す」側になる感じがあるんですよ。名刺を出すかどうかは別にしてさ。これを「知ったもん負けの法則」と呼んでるんです。
角田:なるほどね。
加藤:その時に「知ったもん負け」というのは「知られたもん勝ち」ではないんです。要は、知られている側が上がるんじゃなくて、相手のことを知っている側が自分で、言ってしまえば勝手に下がっていくんです。
初めて会う相手の場合、お互いに対して、知っている情報の量がそれぞれありますよね。「読者と会います」という時、著者である私は読者であるその方のことはまだ知らないわけです。お互いに会ったことがないわけですから。
でも読者のほうは本を読んでるぶん、私のことを知っている。とくにこの『仕事人生あんちょこ辞典』は750ページあるから、まあ全部読んだとして750ページ分、読んでもらったとすると400分くらいの時間がかかる、それだけこちらのことをご存じなわけですよ。
角田:そうか、相手はこっちを知ってるんだ。
加藤:そうすると、情報を知ってる人のほうがむしろ恐縮しちゃう、みたいなことがあるんですよね。
角田:ああ、なるほどね。
加藤:それがそのまま請求額や見積額に直結するかは別だけど、初めて会う前に、自分について多くのことを相手が知っている状況を作れるかどうかは、結構ポイントなんじゃないかな。「有名人」って要はそういうことでしょう。
角田:皆が知ってるからね。
加藤:そういう状況を作れると、さっき角田くんが言ってたことに近い、同じアウトプットでも安く感じられるようなことが起こりやすくなるんじゃないかな。
角田:僕のことを知らないクライアントのところに行くとすごく冷たくされることとかあるんだよね。
加藤:そういうこと。相手が角田くんのことを「知ってない」から角田くんに「負けない」んだよ。
角田:そうなんだよね。ああいう態度って腹が立つんだけどそういう時に、僕の名刺って裏側にこれまでやった番組やら本やらなんやら死ぬほどの情報量を書いてるじゃないですか。
それを打ち合わせの間に向こうもチラッと見ると、「金スマ」とか書いてあるのを見るのかな? 10分ぐらい後に態度がコロッと変わることがあるんだよね。
加藤:それが「知ったもん負け」。