飯山や高山にも新幹線効果
北陸新幹線の金沢延伸では、「かがやき」が停車する金沢と富山が注目されていますが、それ以外にも、新幹線効果が期待できる地域が多くあります。中でも注目されるのは長野県の飯山です。これまで、東京から飯山に行くには長野駅で乗り換えが必要で、およそ3時間かかっていましたが、乗り換えが不要となるうえ、30分~1時間の移動時間の短縮が見込まれています。
新幹線の延伸により個人旅行の増加が期待される中、駅を起点とした観光ルートの開発・案内や、現地での着地型観光商品(観光地が積極的に魅力をアピールして企画する旅行商品のこと)の提供などが求められています。そのような中、飯山は「飯山旅々。」としてロングステイやグリーンツーリズムをテーマとした、多種多様な体験型・着地型の旅行プランの提案で知られており、今後、徐々に注目度が高まってくるでしょう。
また、岐阜県の高山も注目されます。現在、東京から高山に行くには、名古屋駅で特急に乗り換えて約4時間かかっていますが、北陸新幹線延伸後は、乗り継ぎがスムーズであれば、富山乗り換えによって20分程度の時間短縮が見込まれます。そのため、料金にもよりますが、富山経由を選択する人も多くなるでしょう。レンタカーによる白川郷・五箇山(ごかやま)なども含めた周遊であれば、東海北陸自動車道を使いやすい新高岡駅を利用する人もいると思われます。行きと帰りで東海道新幹線と北陸新幹線をそれぞれ楽しむ「1周ルート」など、これまでと違うルートを提案する旅行プランも出てくると予想されます.
東京圏旅行需要の奪い合いが始まる
北陸が東京から3時間以内となることで、東京からほぼ同じ時間で行けるほかの観光地にとっては強力な競合相手が現れたことになります。たとえば、京都と金沢は地域イメージや保有資源に類似性があるとされ、実際、9月30日の京都新聞社説ではその危惧を踏まえた提言がなされています。また、新潟についても、地理的環境や観光資源、食の楽しみなどに類似性がみられますので、訪問先として金沢、富山と比較されることになるでしょう。
そのため、これらの観光地では、東京圏の観光客を狙って工夫を凝らした取り組みが登場してくることでしょう。各地のプロモーションをじっくり比較検討しながら旅行計画を立てる楽しみが、格段に増えそうです。
北陸は東京圏の活力をどのくらい取り込めるか
北陸新幹線の金沢開業により、北陸に関係する人の移動が大きく変化することは間違いありません。現在、北陸は関東方面よりも関西方面との結び付きが強くなっていますが、今回の新幹線延伸によって、これが逆転する可能性も考えられます。
実際、北陸の各自治体は東京圏での誘客活動に、より力を入れるようになっています。今回の新幹線延伸で、北陸は3大都市圏のいずれからもほぼ同程度の時間距離となります。北陸が一層魅力的な地域として輝くうえで、新幹線延伸は大きなきっかけになると考えられます。これまでの関西圏や名古屋圏に加え、東京圏の活力も取り込んで、北陸がさらに魅力的な地域づくりに取り組むことで、わが国全体の観光も大いに盛り上がることが期待されます。
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