一方、北陸経済へのインパクトを考えると、現地滞在時間が延びることの効果が注目されます。現在、金沢から東京に戻るには、遅くとも金沢駅を19時前に出発する必要があります。これは札幌で20時30分ごろ、博多では21時ごろまで滞在できるのに比べると、非常に早くなっています。北陸新幹線のダイヤは未発表ですが、上越新幹線の新潟発東京行き最終が21時30分ごろであることを考慮すると、金沢発東京行き最終として21時ごろの設定は十分に可能と考えられます。
金沢、富山ともに、飲食店が集まる繁華街が新幹線駅から少し離れているため、この需要をうまく取り込むためには、新幹線駅と繁華街を結ぶ2次交通アクセスに工夫が必要です。飲・食ともにすばらしい魅力がある北陸。交通アクセスさえ整えば、これまで後ろ髪を引かれる思いで帰京していた出張客による飲食需要が、札幌や博多のように顕在化する可能性は高いでしょう。
新幹線の魅力として、定時性と大量輸送能力もあります。北陸地方では日本海側の天候の特性から、冬期には特急の遅れがしばしば発生しており、航空機も同様でした。新幹線では、この点が大幅に改善されると期待されます。また、新型車両の定員は1編成で934名となっており、関東と北陸間での輸送力は大幅に増強されると見込まれます。その結果、繁忙期であっても、これまでよりも座席が確保できる可能性が高まるため、これまで北陸観光をあきらめていた人々の需要を顕在化させることが期待できます。
金沢、富山観光は日帰り旅行化が進む
一般に、日帰り圏域は片道2~3時間程度までと言われます。金沢、富山ともに、これまでは東京から片道3時間以上かかっていましたが、北陸新幹線によって、東京からの日帰り圏となります。先述のように、滞在可能時間が大幅に延びるため、金沢、富山いずれでも市街プラスアルファ程度であれば、十分に日帰りで楽しめるようになるでしょう。実際、東京から新幹線を利用した日帰りパックツアーの目的地には、すでに八戸、角館(かくのだて)など片道2時間半を超える先もあることから、東京から北陸、逆に北陸から東京への日帰り旅行ニーズの顕在化、また、旅行商品の発売は確実でしょう。
日帰り旅行では、相対的に移動時間の比率が高まるため、移動の快適性が重視されます。東京と北陸の間の利用者はビジネス客が多いうえ、近年は子どもたちも携帯ゲーム機を持っているため、ファミリー層であっても車内充電に対する要望が強くなっています。北陸新幹線の新型車両では、普通席でも全座席で電源が使えるようになっており、既存の新幹線よりも高いサービスレベルが提供されています。この点、日帰り客のニーズに応えているといえます。
このように北陸観光は金沢、富山を中心に日帰り化が進むと考えられるため、これまで宿泊していた人々も、一部は日帰りを選択するようになるでしょう。そのため、両都市の宿泊施設では、周辺観光地との周遊を提案するなど、宿泊者数を増やすための工夫がなされたプランが増えてくるはずです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら