実は「人に頼るほど自分の能力も高まる」納得理由 助けられることで成長の幅が大きく広がる

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人に頼ることは、つながることであると同時に、その人から学ぶことでもあります。

私がかつて勤務していた研究機関は、厚生労働省の所管ほか保健医療福祉全域にまたがる研究を担うだけでなく、教育機関の役割も果たしていましたので、全国から自治体従事者が研修を受けに来ていました。今でいうリカレント教育、大人の学び直しの機会を提供していたのです。

そこで私は、普段は自治体職員として行政の中で働いている方々が、寮生活を送り、机を並べて学び合う姿を見て、「大人だからこそ他者から学ぶことに価値がある」「大人だからこそ学び合える」ということを強く感じました。「成人学習」という教育手法が確立されていて、大人は児童や学生とは違う学び方があるということを、この職場で学んだのです。

小中高校生のときには、正解があり、それに向かってひたすら勉強をします。唯一絶対の解があり、それを丸暗記するような勉強法です。しかし、社会に出て働き始めると、絶対的で唯一無二の正解はありません。むしろ、正解がない課題のほうが多いでしょう。

そんなとき、「正解がない」と途方に暮れるのではなく、「正解が幾通りもある」と考え、「自分の今の状況にとっての最適解を選ぶ」――そのために複数の解決法を学び、状況に合わせてそれらを“出し入れ”できるような力を身につける。これが成人学習です。

アンラーニングのプロセス

研修の場で、当時の上司が研修生に対して話していたことが今でも印象に残っています。その研修コースには、医師、技師、管理栄養士などの専門職も学びに来ます。また、学びに来る中堅層の職員は、自分の仕事や資格に誇りを持っています。そんな彼らに向かって、上司は、

『『頼る」スキルの磨き方』(KADOKAWA)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

「ここに来たら医師(または技師、管理栄養士)という資格や自分のキャリアは忘れなさい」

と伝えたのです。

とても驚きましたが、自分のアイデンティティである専門資格や肩書を外し、謙虚に、何者でもない「自分」として学ぶことの大切さを伝えていると理解しました。そしてまた、これはまさにアンラーニング(学んできた知識を捨て、新しく学び直すこと)のプロセスであると思いました。

自分の積み重ねてきた、成功体験に基づく流儀を捨てることはなかなか難しいかもしれません。しかし、それまでに積み重ねた経験は、新しい情報や新しいやり方を拒む要因となりやすいものです。成長していくためには、自分が学ぶ姿勢を持つことがとても重要なポイントになるのではないでしょうか。

前回記事:「人に頼る=恥」と考える人に伝えたい重要な視点

吉田 穂波 医師、神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授

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よしだ ほなみ / Honami Yoshida

三重大学医学部卒業後、聖路加国際病院で臨床研修ののち、名古屋大学大学院医学系研究科で博士号取得。その後、ドイツとイギリスの産婦人科及び総合診療の分野で臨床研修を行い、帰国後は女性総合外来の創設期に参画。2008年、0歳から3歳まで3人の子どもを連れてハーバード公衆衛生大学院に留学。卒業後は同大学院のリサーチフェローとなる。2011年の東日本大震災では産婦人科医として被災妊婦や新生児の支援に携わる。このとき「受援力」の大切さを痛感し、無料でダウンロードできるリーフレット『受援力ノススメ』を作成。国や地方自治体の検討会など、全国で「受援力」を学ぶ場作りに取り組む。4女2男の母。

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