実は「人に頼るほど自分の能力も高まる」納得理由 助けられることで成長の幅が大きく広がる

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子どものときにできるようになった基本的なことと、大人になってからできるようになったこと、チャレンジしたことの、どちらが面白く感じられますか。大人だからこそ、助けられ、成長することは、とても楽しい学びになるはずです。そう考えると、大人になってから学ぶこと、新たに何かをできるようになることは、なんて楽しいのでしょう。

小学生で九九を習った、そのときはそれが精一杯でした。しかし大人になれば、もっと高度な知識をインプットし、スキルを学び、成長することができます。子どものときの成長と比べ、成長の幅がぐっと広がり、多様な能力を身につけることもできます。

ですから、大人になってから学ぶためにも、自分ができないことを見つけ、できるようになるために、人や物の力を借りるのです。

参考になる第34代アメリカ大統領の仕事術

社会に出て働き始めたころの皆さんは、どのようにして仕事を身につけていったのでしょうか。また、どのようにして仕事の幅を広げていっているのでしょうか。

1つのスキルを身につけたら、今度はできることの幅を広げる必要があります。以前に、偉業を成し遂げた人はどのようにして仕事をしていたかを調べてみたことがあるのですが、アメリカ第34代大統領であるドワイト・D・アイゼンハワーの仕事のやり方は象徴的な例として参考になりました。「10人分くらいの仕事をした」ともいわれるアイゼンハワーの時間管理術では、「権限委譲」がキーワードとして登場したのです。

下の図表は、「アイゼンハワー・マトリクス」としてよく紹介されるもので、仕事を「重要度」と「緊急度」の2つの尺度で分け、4象限のどこに位置するかを見るものです。

アイゼンハワーの言葉とされている「重要なことで緊急なことはめったになく、緊急なことで重要なことはめったにない(What is important is seldom urgent and what is urgent is seldom important)」を構成図にしたものです。

(図表:筆者作成)

(外部配信先では図や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

この図表ではよく、「重要で、緊急ではないものをいつやるか決めよう(右上)」、「重要でもなく、緊急でもない仕事はやらないようにしよう(右下)」といった教訓を導き出すのに使われていますが、もう1つ、忘れてはいけないのは、左下です。

重要ではないが、緊急な仕事は権限委譲(Delegate)せよ、つまり、この部分こそ誰かに頼り、仕事を任せよということです。

「手伝ってもらうことで、自分でできるようになる」ということだけでなく、「手伝ってもらうことで、自分は自分にしかできないことに注力する」ことによって仕事をこなし、自分の仕事の幅を広げていくのです。

どんな仕事も「すべて独力でできる」という考え方をしていると、それは自分の成長する範囲を狭め、チャンスを失うことにつながりかねません。独力でできるという感覚は、時に過信となり、ほかの人の仕事に助けられ学ぶことの機会損失になってしまうのです。

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