「奨学金600万円」借りた女性が苛立つ「ある一言」 借りていない側の「借金扱い」に納得いかない訳

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母親に勧められて看護師を志し、奨学金600万円を借りた女性。返済する中で苛立ちを覚えたという、奨学金を借りていない側の「ある一言」とは?(写真:kazuma seki/GettyImages)
これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく(前回の記事はこちら)。

今回、話を聞くのは松村静香さん(仮名/26歳)。関東地方の某県にて、看護師として働く女性だ。

話を聞く中で彼女に抱いた印象は「前向きな人」というものだった。しかし、そんな彼女でも「ショックを受けた」と語る「奨学金を借りていない人たち」による言葉があったという。

母の勧めで看護師を志す

自営業の父、会社員の母のもとに生まれた松村さんは、上に姉、下に弟がいる3人きょうだいの次女だ。現在、病院で看護師として働いている松村さんだが、志したきっかけは母親にあったという。

画像をクリックすると本連載の過去記事にジャンプします

「もともと母は看護師になりたかったそうなんです。でも実家が裕福ではなかったため、その夢を諦めるしかなかったそうで。

その後、父と結婚して、私たち3人きょうだいを産むわけですが、母いわく、私は誰かがケガをして血を流していても、一切騒がない子どもだったらしいんです。それを見て、母は『じゃあ、この子を看護師にさせよう』と思ったらしく、『看護師はいい仕事だよ』と刷り込んだそうで(笑)。

私自身も、子供の頃に『ナースのお仕事』というドラマがはやっていたこともあって、母の思惑通り『看護師って楽しそう』と思うようになりました」

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