看護師は『5年やって一人前』と言われる世界で、私は今6年目なのですが、仕事に慣れないうちは大変な時期もありました。でも、奨学金があるから辞められず、結果的に、仕事がある程度できるようにもなった。私の周囲に限ったことかもしれないですけど、早くに辞めちゃった子は奨学金を借りてなくて、続けて一人前になっている子は奨学金がある……みたいな印象もあります。
また、私の場合は家族の応援もありましたしね。金銭面のサポートこそなかったけど、実習中の送り迎えとか、両親はいろいろしてくれたんです。そのことを考えたらすぐには辞められないなとは思いますよね」
恋人の「はやく返せば?」に苛立ち
過去は変えられないが、将来は自分の気持ち次第で変えられる……そんな言葉が浮かぶ松村さんだが、周囲の人は奨学金のことをポジティブに捉えてくれるわけではないようだ。
例えば現在交際中の恋人との間には、こんなやり取りがあったという。
「彼にとって奨学金は『多額の借金を背負っている』という認識のようで、『できるだけはやく返したほうがいいんじゃない?』って軽く言われるんです。正直ちょっと放っておいてほしいというか、『あなたに返してもらうなんて思っていないのに』という感じで。
借りてない人からすると奨学金は借金なのかもしれないけど、でも借りた当事者からすると『確かにお金を借りたのは事実だけど、ギャンブルとか、自分の怠惰さでできた借金ではない。連帯保証人もいるけど、親族に迷惑をかけるつもりもないし、絶対に自分で返す』という考え方なんですよ」
借金は借金かもしれないが、世間一般で言われるような借金とは違う……ということらしい。
なお、このようなギャップは周囲でもあるという。
「知り合いに医師(男性)と看護師(女性)のカップルがいて、男性のほうはお金に困っていない一方、女性のほうは奨学金を返済しているんです。ふたりは結婚を前提に付き合っていたそうなのですが、あるとき男性から『奨学金を返し終わってからじゃないと結婚はしたくない』『借金がある状態のまま結婚するのは嫌だ』と女性側が言われたらしく……。それを聞いたとき、他人事には思えずに私も悲しくなってしまいました。やっぱり、ただの借金と思われるのか、って。
でも実際問題、看護師で奨学金を借りてる人って少なくないと思うんです。看護学校時代、日本学生支援機構の『スカラネット・パーソナル』のパソコンの入力の仕方などに関する説明会が学校で何度かあったのですが、私の学年はほとんど奨学金を借りている人ばかりでしたから」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら