親の宗教入信で「奨学金570万円」ある男性の過酷 理解や支援なく苦労するも、気合いで人生好転

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母が病気で亡くなり、父は新興宗教に入信。「神のお告げ」で信者の女性と再婚し、家はやがて困窮。奨学金570万円を借りて芸大に進学した結果……(写真:AH86/GettyImages)
これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

「奨学金を借りてると話すと、周りからは気を遣われることが多いんです。でも僕の経験は、奨学金を借りようか悩んでいる高校生の参考になると思います」

そんなメッセージをくれたのは、恩田一朗さん(仮名・29歳)。都内にて映像関係の仕事をする男性で、関西圏にある芸術大学を卒業している。借りた奨学金の総額は約570万円だ。

彼の人生は、一言で言うと「過酷」になるだろう。しかし、人生を切り開くために彼がしてきた努力からは、学べるところは多くあるに違いない。

実母が病気で他界、父は新興宗教に…

恩田さんは4人きょうだいの長男だ。本連載では「3人以上のきょうだい(の長男)」がたびたび登場するが、家庭の事情は他の人より複雑である。

「僕が15歳の頃に、母が病気で他界したんです。父は相当引きずってしまったようで、その後、『魂と会話ができる』とうたう新興宗教にハマってしまいました。

画像をクリックすると本連載の過去記事にジャンプします

そして、その教団から『この人と結婚しなさい』と信者の女性を紹介されて、再婚することに。だから、先ほど『4人きょうだい』と説明しましたが、5つ下の妹は継母の連れ子で、一回り離れた弟は、父と継母の間に産まれた腹違いの弟なんです」

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