「奨学金600万円」借りた女性が苛立つ「ある一言」 借りていない側の「借金扱い」に納得いかない訳

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繰り返すが、松村さん自身は奨学金を借りたことを後悔しているわけでもなく、前向きに捉えている。

「職場はいい人ばかりですし、仕事柄、いろんな人たちと話すから、同年代の人たちより苦しい経験も含め、いろんなことを経験できます。そして、それをお金で買えたかというと、たぶん買えなかった。奨学金を借りて、看護師になれたからこそ、今があるのかなと思っています」

陳腐な表現にはなるが、「若い時の苦労は買ってでもせよ」ということらしい。

重要なのは「糧にしていく」ことではないか

実際、人生において何が「いい決断」なのかは、そのときにはわからないものだし、われわれには「過去にした決断を、いい決断にしていく」ことしかできない。松村さんだけでなく、本連載で話を聞いた人たちの多くが、奨学金返済を人生の糧にしていることが、その証明だろう(もちろん、制度全体を全肯定する意味合いではない)。

ただ、家庭の事情は人それぞれだ。奨学金を借りるのが家庭の都合であれば、奨学金を借りないのもまた、家庭の都合だろう。

奨学金を借りていない人は助言のつもりで「早く返したほうがいいよ」と言うかもしれないが、言われた側が「代わりに払うわけでもないのに、口を出さないでほしい」と思う可能性もあることは、頭に入れておいたほうがいいだろう。

本連載「奨学金借りたら人生こうなった」では、奨学金を返済している/返済した方からの体験談をお待ちしております。お申し込みはこちらのフォームよりお願いします。
千駄木 雄大 編集者/ライター

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せんだぎ・ゆうだい / Yudai Sendagi

編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。奨学金、ジャズのほか、アルコール依存症に苦しんだ経験をもとにストロング系飲料についても執筆活動中。奨学金では識者として、「Abema Prime」に出演。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)。原作に『奨学金借りたら人生こうなる!?~なぜか奨学生が集まるミナミ荘~』がある。

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