中国政府の交通運輸省、公安省、応急管理省(訳注:災害や事故などの危機管理を統括する政府機関)は2月24日、道路運送車両の「リアルタイム監督」に関する規定改正を発表した。規定違反に対する罰金の額を引き下げ、ドライバーの過度の負担を軽減するとしている、
この改正の背景には、10カ月前に起きた痛ましい事件がある。2021年4月5日、中国河北省のトラック・ドライバーの金徳強氏が、車両の衛星測位システム(訳注:人工衛星からの信号を利用して現在位置を計測する装置)が作動していなかったとの理由で、検問所の係官から2000元(約3万6500円)の罰金支払いを命じられた。
「故意ではない」と主張したが認められなかった金氏は、絶望のあまり農薬を飲んで自殺した。この事件は、トラック・ドライバーが置かれた過酷な実態を白日の下にさらけだし、中国社会に大きな反響を呼んだ。
今回の改正では、車両の衛星測位システムの故障を放置していた場合の罰金が、従来の800元(約1万4600円)から「200元(約3650円)以上800元以下」に引き下げられた。また、衛星測位システムを壊したり測位データを改ざん・消去したりするなどの悪質行為の罰金も、「2000元以上5000元(約9万1300円)以下」から「500元(約9130円)以上2000元以下」に改められた。
検問所が「利益追求型」の取り締まり
中国では積載量12トン以上の大型トラックやトレーラーヘッド(牽引車両)に対して、衛星測位システムの搭載および政府が運用する「公共監督サービス」プラットフォームへの常時接続が義務づけられている。
この公共プラットフォームは、車両から自動送信されるデータをもとに運転状況をリアルタイムで監視し、スピードの出しすぎや疲労運転などを検知するとドライバーに警告を発する。
また、監督当局は記録されたデータをもとにドライバーの違反行為を処罰することができる。自殺した金氏は、彼のトラックの常時接続が切れていたために罰金を科されたのだ。
2013年1月から導入されたこのシステムは、道路交通の安全性を高め、トラックの事故を減らすことが本来の目的だ。ところが現実には、罰金の取り立てが自己目的化した「利益追求型」の取り締まりが各地の検問所で常態化し、ドライバーにとって大きな負担になっていた。
(財新記者:方祖望)
※原文の配信は2月26日
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