中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が「不正競争行為」による損害を被ったとして、同業の蜂巣能源科技(SVOLT)を相手取る訴訟を起こしたことがわかった。この問題についてSVOLTは2月14日、「わが社は違法な経営はしていない。現在応訴の準備中だ」と、財新記者の取材にコメントした。
SVOLTは、中堅自動車メーカーの長城汽車の車載電池開発部門が2018年に分離独立して発足した新興電池メーカーだ。同社の説明によれば、今回の訴訟はCATLが元従業員と交わした(競合他社への転職や競合企業の設立を禁じる)競業避止義務の契約に関するものだが、詳細はまだ把握していないという。一方、CATLは提訴の内容について一切明らかにしていない。
実はCATLは過去にも、9人の元従業員が競業避止義務に違反(してSVOLTに技術を漏ら)したとして、彼ら個人を相手に訴訟を起こしている。その時の争点は、元従業員らが転職した「億新諮詢服務」と「天宏企業管理諮詢」という2社のコンサルティング会社が、SVOLTの実質的な関連会社かどうかだった。
これらの訴訟でCATLは、元従業員らが上記の2社に転職したのはSVOLTによる「偽装工作」だったと主張。その目的は、CATLに対する元従業員らの守秘義務および競業避止義務を回避するため、表向き(競合先ではない)コンサルティング会社に入社させて、実際には(競合先の)SVOLTに役務を提供させることだったと訴えた。
元従業員9人に対する訴訟で全勝
裁判所はCATLの主張を認める判断を下し、同社は元従業員に対する9件の訴訟に全勝した。そのうちの1件で、2020年9月に出た判決書によれば、億新諮詢服務の法人登記の住所はSVOLTの支社の住所と同一であり、代表電話番号も同じだった。
さらに、億新諮詢服務の法定代表者がSVOLTのCEO(最高経営責任者)である楊紅新氏の名義で登記されていたことなども、裁判所が同社を実質的な関連会社だと認定する根拠になった。また、同時期に出された別の判決書でも、天宏企業管理諮詢が同じくSVOLTの関連会社と認定された。
CATLが元従業員の競業避止義務違反に神経を尖らせる背景には、中国でEV(電気自動車)の販売が予想を上回るペースで拡大し、車載電池の需要が急増していることがある。
電池メーカー各社は優秀なエンジニアの不足に悩んでおり、業界トップのCATLから破格の待遇で引き抜きを図るケースが後を絶たない。言い換えれば、CATLにとっては人材流失に伴う技術漏洩のリスクが大幅に高まっているのだ。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は2月15日
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