中国で生鮮食品のネット販売・スピード配送を手がけるEC(電子商取引)スタートアップ企業が、収益モデルの確立に苦しんでいる。
この分野の草分けで、アメリカのニューヨーク証券取引所に上場する「叮咚買菜(ディンドンマイツァイ)」は2月15日、2021年10~12月期の四半期決算と2021年の通期決算を発表。10~12月期の売上高は54億8000万元(約997億円)と前年同期比72%の大幅増収を記録したものの、非アメリカ会計基準(Non-GAAP)ベースの純損益は10億3400万元(約188億円)の赤字だった。
2021年通期の売上高は、前年比77.5%増の201億2000万元(約3662億円)。純損益は64億3000万元(約1170億円)の赤字を計上した。2020年の通期の純損失は31億8000万元(約579億円)であり、赤字額が1年で2倍以上に膨らんだ格好だ。
そんななか、同社は「2021年12月の上海地区の『UE(ユニットエコノミクス)』がプラスに転じ、1注文当たりの収支均衡を達成した」と決算説明会で明らかにした(訳注:UEは事業の収益性をユニット単位で測定・管理する経営指標の一種)。上海市は叮咚買菜の本社所在地であり、同社にとって(知名度や利用率などで見て)最も成熟したマーケットだ。
株価は売り出し価格から7割下落
「上海地区の現在の客単価は66元(約1201円)で、28%以上の粗利率を確保している。配送費や販売管理費など様々なコストを差し引いても、3~5%の純利益率を達成可能だ」
叮咚買菜の創業トップの梁昌霖氏は決算説明会でそう説明し、「上海地区の収益モデルを他の地域にも横展開したい」と意気込みを語った。
だが市場関係者の間では、同社の事業形態そのものを疑問視する声が依然として少なくない。叮咚買菜はスマートフォンのアプリ経由で受注した生鮮食品を最短29分で顧客に届ける。それを実現するため、小型の倉庫兼配送センターを市街地に数多く配置している。
この形態は(大型倉庫を郊外に設置する一般的な形態と比べて)物流コストが高くつき、効率の改善が難しい。さらに、(配達時間が約束より遅れた場合の)違約金の負担や(低価格の生鮮食品が主力ゆえの)粗利率の低さが、事業の収益化を実現するハードルになっている。
投資家の疑念を反映し、叮咚買菜のADS(アメリカ預託株式)は2021年6月のIPO(新規株式公開)からずっと下落が続く。上場時の売り出し価格の23.5ドル(約2715円)に対し、2月15日の終値は7.30ドル(約844円)と7割近くも落ち込んでいる。
(財新記者:原瑞陽)
※原文の配信は2月16日
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