中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は1月18日、自社運営による車載電池の交換サービス「EVOGO(エボゴー)」を発表した。同社が開発した「標準電池モジュール」の交換ステーション網を自ら構築し、EV(電気自動車)メーカーに標準電池の採用を広く呼びかける野心的な取り組みだ。
EVの充電方式には、車体に固定された電池に急速充電器などで充電する方式と、車体から取り外し可能な電池モジュールを交換する方式の2つがある。現在の主流は前者だが、充電に時間がかかるのが欠点だ。その点、後者ならガソリン車の給油並みの短時間で電池モジュールを交換できる。
CATLはこのほど、電池交換サービスの専門子会社の時代電服科技を設立。その総経理(社長に相当)を務める陳偉峰氏によれば、CATLが「チョコレート交換電池モジュール」と名付けた標準電池モジュールは1キログラム当たり160Wh(ワット時)を超えるエネルギー密度を持ち、1台のモジュールでEVを約200キロメートル走らせることができるという。
このモジュールは、複数台を組み合わせてEVの航続距離を伸ばすこともできる。モジュール内の電池セルの寿命やトラブルの管理は、無線通信システムで制御する設計を採用。モジュールの外装にはプラスとマイナスの電極2つがあるだけで、簡単かつ素早く交換できる。
電池交換式のハードル下げ、参入促す
「個人のEVユーザーの大部分は、日常的な運転パターンでは電池容量の10~20%しか使っていない。だが、いざという時の電池切れを心配して、大容量電池を搭載したEVを買わざるをえず、購入時の負担が必要以上に重くなっている」。陳氏は現状をそう解説する。
その点、電池交換式のEVは電池モジュールを(買い切りではなく)リース方式にすることで、車両価格を抑えることができる。CATLは、標準電池モジュールの交換ステーション網をまず10都市で展開する計画だ。また、標準電池を採用する最初のEVは、国有自動車大手の中国第一汽車集団の系列ブランド、一汽奔騰(ベンタン)の「NAT」であることも発表した。
中国で電池交換式EVの普及を目指す取り組みは、これが最初ではない。例えば新興EVメーカーの蔚来汽車(NIO)は、すでに2018年から個人オーナー向けの電池モジュール交換サービスを提供しており、2021年11月末の時点で全国に700カ所の交換ステーションを開設済みだ。
しかし、EVメーカーではなく電池メーカーが交換サービスを手がけるのは、CATLが初めて。標準電池モジュールを共用することで、EVメーカーが電池交換式の新型車を投入するハードルを引き下げ、より多くのEVメーカーが参入することをCATLは期待している。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は1月19日
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