中国の国有中堅自動車メーカー、長安汽車の関連会社の阿維塔科技(アバター・テクノロジー)は11月5日、グループ外の3社のパートナー企業から出資を受け入れ、24億2000万元(約429億3080万円)を調達したと発表した。注目すべきなのは、出資者のなかに車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が含まれており、持ち株比率が28.99%とアバターの第2位株主に浮上したことだ。
1年前の2020年11月、長安汽車は通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)やCATLと提携して高級スマートEV(電気自動車)の新ブランドを立ち上げると発表。2021年5月、プロジェクトの受け皿となる子会社の社名を変更し、アバターが発足した。今回の出資受け入れにより、筆頭株主である長安汽車の持ち株比率は39.02%に低下する。
資金調達の発表と同時に、アバターは11月中にスマートEVの初のモデルをお披露目すると予告した。この新型車には(3次元センサーや自動運転システムなど)ファーウェイのスマートEV向けソリューションとともに、CATLの最新技術が搭載される。
この最新技術の詳細について、CATLはまだ公表していない。そんななか、同社がアバターに対して3割近い出資に踏み切ったことが、業界関係者の間で臆測を呼んでいる。
EVの車台と電池セルの一体的設計が狙いか
「今回の出資は、CATLがアバターのEV開発により深くコミットすることを意味する。新型車には、一般的な車載電池や電源管理システムにとどまらない新たな技術が搭載されるのではないか」。EV業界の内情に詳しいある関係者は、そう予想する。
現在主流の車載電池は、多数の電池セルと制御基板を組み込んだモジュールになっている。EVに搭載する際は、複数のモジュールを組み合わせてバッテリーパックに仕立て、車台の床下部分に取り付ける。
だが、2段階で組み立てるため生産コストが余計にかかるうえ、重量も体積も大きくなってしまう。そのため、バッテリーパックの重量当たりのエネルギー密度やスペース効率が低下する欠点があった。
この問題に対処するため、EVメーカーの一部は「セル・トゥー・パック(CTP)」と呼ばれる新技術をすでに採用している。モジュールを廃し、バッテリーパックに電池セルを直接組み込む方式だ。そして、CTPをさらに一歩進めた次世代技術が、EVの車台と電池セルを一体的に設計してバッテリーパックを省く「セル・トゥー・シャーシ(CTC)」である。
前出の関係者は、CATLがアバターの第2位株主となって関係を深めた背景について、「CTC の実用化を急ぐCATLが同社主導でアバターのEVに採用させたい思惑があるのではないか」と分析している。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は11月6日
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