アメリカのEV(電気自動車)大手のテスラが、車載電池の製造に不可欠なリチウムの調達を、原料メーカーからの直接購買に切り替えることがわかった。11月1日、中国のリチウム製品大手の贛鋒鋰業(ガンフォンリチウム)は、電池向け水酸化リチウムのテスラへの供給契約を更新したと発表。契約期間は2022年1月1日から2024年12月31日までの3年間だ。
テスラと贛鋒鋰業は2018年から協力関係にあり、更新前の契約では、テスラが指定する電池メーカーに贛鋒鋰業が水酸化リチウムを供給する形式になっていた。しかし更新後の契約では、テスラが贛鋒鋰業から水酸化リチウムを直接購入(して電池メーカーに供給)する形式に改められた。
「調達方法を変更した狙いは、電池材料の価格交渉権を自ら握ってコストを制御することにある」。EV業界に詳しい調査会社のアナリストは、テスラの思惑をそう分析する。
リチウム価格は年初の4倍に高騰
背景には、2021年に入ってから右肩上がりが続くリチウムの価格高騰がある。非鉄金属の情報サービス会社である上海有色網のデータによれば、11月2日時点の電池向け水酸化リチウムの市場価格は1トンあたり19万4000元(約345万円)と、年初比で4倍に上昇した。
原料メーカーからの直接購買は、実はテスラが先駆者ではない。車載電池首位の寧徳時代新能源科技(CATL)や同2位の比亜迪(BYD)などの大手電池メーカーは、類似の戦略を一足早く採用。リチウム製品メーカーと直接契約して価格交渉権を手に入れ、調達したリチウムを電池の正極材メーカーに供給する方法に切り替えた。
その結果、中抜きされた正極材メーカーは電池メーカーから加工賃だけをもらう存在に格落ちした。だが、テスラのような完成車メーカーによるリチウムの直接購買が広がれば、電池メーカーもまた加工会社に変質し、サプライチェーン内での存在感が低下する可能性が否定できない。
(財新記者:廬羽桐)
※原文の配信は11月3日
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