EV用電池、中国で「リン酸鉄系」が躍進する背景

技術革新で性能向上、市場シェア5割に迫る

アメリカのテスラも、中国で生産する主力EVにリン酸鉄系電池を採用した。写真はテスラの上海工場の生産ライン(同社の投資家向け広報資料より)

中国の車載電池市場で、「リン酸鉄系」リチウムイオン電池のシェアが「三元系」電池を追い抜く勢いで伸びている。業界団体が発表したデータによれば、2021年1~9月に中国で生産された新車に搭載されたリン酸鉄系電池は44.8GWh(ギガワット時)と、前年同期の4.3倍に増加した。その結果、同じ期間のリン酸鉄系の市場シェアは48.7%と、三元系の51.2%に肉薄する水準に急上昇した。

リチウムイオン電池にはさまざまな種類があるが、車載用電池の現時点の主流は三元系とリン酸鉄系の2種類だ。前者には正極材にニッケル・コバルト・マンガン酸リチウムが、後者にはリン酸鉄リチウムが使われる。

両者にはそれぞれ一長一短がある。三元系はエネルギー密度が高く、低温時にも比較的安定した出力が得られる半面、希少金属のコバルトを使うためにコストが高い。一方、リン酸鉄系はエネルギー密度が三元系よりも低く、低温時には出力が低下しやすい。しかし希少金属を使わないためコスト面では有利だ。

高級EVでもリン酸鉄系の採用進む

同容量の電池で比較すれば、エネルギー密度が高い三元系のほうがリン酸鉄系よりも重量を軽くできる。このため(電池の搭載スペースが限られる)乗用車には三元系、バスやトラックにはリン酸鉄系が適しているとの考え方が、車載電池業界では一般的だった。しかし技術革新を通じてリン酸鉄系のエネルギー密度が改善し、コスト面の魅力が相対的に高まったことが、市場シェアの急上昇を後押ししている。

2020年以降は、高級乗用車でもリン酸鉄系を採用するケースが増えてきた。アメリカのEV(電気自動車)大手のテスラや、中国の新興EVメーカーの小鵬汽車(シャオペン)は、主力車種にリン酸鉄系電池を搭載した追加グレードを投入。新興EVメーカーの蔚来汽車(NIO)は、リン酸鉄系と三元系を両方組み合わせたバッテリーパックを2021年9月に発表した。

本記事は「財新」の提供記事です

もちろん、三元系電池でも技術革新への努力が続いている。リン酸鉄系に対する競争力を維持するには、主に2つの方向性が考えられる。1つ目は、エネルギー密度をさらに高めて容量当たりのコストを低減すること。2つ目は、エネルギー密度を若干犠牲にしても、正極材のコバルトやニッケルの使用量を減らしてコストを大幅に下げることだ。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は10月15日

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