車載電池世界大手の中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は7月29日、同社初のナトリウムイオン電池の製品を発表した。そのエネルギー密度は1キログラム当たり160Wh(ワット時)と、リン酸鉄系のリチウムイオン電池に迫るものだ。CATLによれば、開発中の第2世代のナトリウムイオン電池では1キログラム当たり200Whのエネルギー密度を目指すという。
ナトリウムイオン電池は、正極と負極の間をナトリウムイオンが移動することで、充放電が可能になる。その最大の強みは、主原料のナトリウムの資源量が世界的に潤沢で、(リチウム資源と違って)地域的な分布にも偏りがないことである。
それだけではない。ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池と基本構造が似ている。そのため、リチウムイオン電池の製造装置の大部分を、ナトリウムイオン電池の生産に流用できる。(低温時に性能が下がるリチウムイオン電池よりも)使用可能な温度範囲が広く、充電が速いことなどもメリットだ。
生産規模拡大によるコストダウンが急務
その一方でデメリットもある。エネルギー密度が(三元系など高性能の)リチウムイオン電池より低く、寿命も短い。そこでCATLは、ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池を併用するシステムを開発中だ。2種類の電池の長所を生かし、短所を補うことが可能になるという。CATLの曾毓群董事長(会長に相当)は、2023年までにナトリウムイオン電池の(原材料の確保、用途の開拓、リサイクルなどの)産業化を実現したいと語った。
電池業界では、ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池ほど高いエネルギー密度が要求されない用途で普及が進むとの見方が主流になっている。具体的には、低価格の低速EV(電気自動車)、再生可能エネルギーの蓄電設備、通信基地局のバックアップ電源などである。
ある電池業界の専門家は、「ナトリウムイオン電池の原材料コストは理論的には低いが、ビジネスとして成功するかどうかは、これからの普及度合いによる」と指摘する。この専門家によれば、中国製のリチウムイオン電池がグローバル市場で優位にあるのは、生産規模の拡大によってコストダウンを実現したからであり、(製品化されたばかりの)ナトリウムイオン電池の将来性はまだ不透明だという。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は7月29日
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