中国のライドシェアサービス大手の哈囉出行(ハロー)は11月9日、ITサービス大手の阿里巴巴集団(アリババ)およびフィンテック大手の螞蟻集団(アント・グループ)から、総額2億8000万ドル(約317億円)を調達する契約を結んだと発表した。
アントはハローの筆頭株主であり、追加出資に応じた格好だ。一方、アントの親会社のアリババが出資するのは今回が初めて。2021年初めに車載電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)から受けた出資を含めると、ハローが調達した資金は今年だけで5億ドル(約567億円)を超える。
同社は2016年の創業当初はシェア自転車専業で、社名も哈囉単車(ハローバイク)だった。その後、2018年に社名を変更して事業の多角化に着手。現在は2輪車(自転車と電動バイク)のシェアサービスのほか、同じ方角の目的地に向かう人がクルマを相乗りできる「順風車」と呼ばれるサービスを展開している。2021年4月からは電動バイクの開発・製造に参入し、電動バイクのバッテリーのシェアサービスも開始した。
2020年末の時点で、ハローは2輪車のシェアサービスを中国全土の400以上の都市で展開し、登録ユーザー数は5億人を超える。順風車のサービスも約300都市に拡大しており、登録ユーザー数は2610万人、登録ドライバー数は1000万人に迫る規模になっている。
「成り行きを見守り、何も決めない」
創業以来、ハローはアントやアメリカのGGVキャピタル、中国の春華資本(プリマベーラ・キャピタル)など、著名な投資会社から次々に出資を引き出してきた。しかし今回の資金調達をとりまく環境は、過去のそれとは大きく変化している。
同社はもともとアメリカのナスダックへの上場を目指し、2021年4月にIPO(新規株式公開)の目論見書をアメリカ証券取引委員会(SEC)に提出した。ところが同年7月、中国のネット配車最大手の滴滴出行(ディディ)がニューヨーク証券取引所に上場した直後、中国のネット規制当局からアプリ配信の停止を命じられる事件が発生した。
これをきっかけに、中国企業がアメリカでIPOを行う場合の中国当局の対応について不確実性が高まり、ハローの上場計画は宙に浮いてしまった。財新記者の取材に応じた同社の関係者は、「今は成り行きを見守り、何も決めないことしか選択肢がない」と打ち明ける。
だが上場の遅延が長引けば、ハローのビジネスの持続性に疑問が投げかけられることにもなりかねない。同社がSECに提出した目論見書によれば、2020年の売上高は60億4400万元(約1071億円)、純損益は11億3400万元(約201億円)の赤字だった。
(財新記者:銭童)
※原文の配信は11月9日
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら