7月30日、アメリカ証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長は声明を出し、アメリカの市場でIPO(新規株式公開)を目指す中国系企業に対して追加の情報開示を求めることを明らかにした。
「最近の中国での動きと中国系企業のVIE(変動持ち分事業体)スキームの全体的なリスクを考慮して、私はSEC職員に指示を出し、(上場を申請する)中国系企業に対して特定情報の明確な形での開示をIPOの目論見書が有効になる前に行わせるよう求めた」
(訳注:VIEスキームとは、ある企業が資本関係ではなく一連の契約を通じて別の企業を実質支配する仕組み。資本関係がなくても会計上の連結が認められる。中国企業の海外上場では、英領ケイマン諸島などにペーパーカンパニーを設立し、VIEスキームを通じて中国の事業会社を支配下に入れ、ペーパーカンパニーを上場させるケースが少なくない)
ゲンスラー委員長は声明のなかでそう述べ、具体的に3項目の情報開示を要求した。第1に、(アメリカの)投資家が購入するのは中国の事業会社の株式ではなく、その事業会社を契約で支配するペーパーカンパニーの株式であること。第2に、中国の事業会社、ペーパーカンパニー、そして投資家は、中国政府の(政策転換など)将来の行動による不確実性(のリスク)にさらされていること。第3に、中国の事業会社とペーパーカンパニーの財務関係を投資家が理解できるよう、定量的指標を含む詳細な財務情報を開示すること、である。
情報開示しなければIPO停止も
声明の発表と同じ日、ロイター通信は「SECが中国系企業のIPO申請手続きを停止した」と報じ、市場関係者に衝撃が走った。この報道に関して財新記者はSECに事実確認を求めたが、明確な回答は得られなかった。
「目論見書の開示項目を増やすこととIPOの停止は、それぞれ別個の話だ。とはいえ申請企業が追加の開示資料を提出するまで、SECは当然、IPOの手続きを一時停止する権限を持つ」。ある外資系投資銀行の関係者はそう解説する。
また、アメリカの証券市場に詳しい金融業界関係者は次のようにコメントした。
「SECの要求には何の問題もない。IPO申請企業の良し悪しにかかわらず、情報開示は十分に行われるべきであり、最終的に投資すべきか否かは投資家が自ら(のリスクで)判断する。SECの最も重要な職責は、投資家が十分な情報開示の下で自己判断できる環境を整えることだ」
(財新記者:岳躍)
※原文の配信は7月30日
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