ネット出前サービスの配送員を対象に、中国の関係当局が労働者としての権益保護を強化する政策を打ち出した。中国国家市場監督管理総局は7月26日、同局と国家インターネット情報弁公室、人事社会保障省など7官庁の連名で、ネット出前サービスの運営会社に対して配送員の待遇改善を指導する通達を出したと発表した。
具体的には、ネット出前の売上(から配送員に支払われる報酬)の配分と、ネット経由の注文の(配送員に対する)割り振りの仕組みを改善するよう要求。また、「過度に厳格なアルゴリズム」で(配送員の)パフォーマンスを評価することを禁止し、配送時間に適度な余裕を持たせ、労働負荷を軽減するように指導した。さらに、業務委託契約関係にある配送員を社会保険に加入させることも促した。
当局の発表が報じられると、中国のネット出前サービス最大手で香港証券取引所に上場する美団(メイトゥアン)の株価は、前日終値より一時15%近く急落した。7月26日の終値は同13.76%下落して235香港ドル(約3343円)で引け、1日当たりでは過去最大の下落幅を記録した。
シェアリング・エコノミー分野におけるプラットフォーム企業は、顧客に対するサービスの提供をギグワーカー(単発の仕事を請け負う労働者)に頼るケースが多い。これにより運営会社は、社会保障、医療保険、人事管理などのコストを低く抑えてきた。だが、美団の配送員の多くは専業だ。彼らのような無数のギグワーカーの存在がなければ、美団のビジネスは成り立たない。
配送員の人件費が大幅に上昇する可能性も
そんななか、(配送員や、彼らを支援する労働問題の専門家たちからは)ネット出前サービスの運営会社が配送員を従業員とみなして、社会保険料の支払いを分担すべきだとの意見が相次いでいた。また市場関係者の間では、関係当局がギグワーカーの働き方と社会保障に関する通達を近く発表するのではないかと噂されていた。
2020年末時点で、美団は総勢950万人の配送員を抱えている。彼らへの報酬とユーザー向けの(割引クーポンや、ポイント付与などの)インセンティブの合計額は、ネット出前事業の売上高の73.5%に上る。仮に全配送員との労使関係が認定されれば、美団は配送員の社会保険料の支払いを分担する必要が生じる。そうなれば、配送員の人件費は大幅に増加し、ビジネスモデルが根本から打撃を受けることになるだろう。
(財新記者:銭童)
※原文の配信は7月26日
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら